2013.09.03 火曜日

豊橋発:大阪ウェルディング工業株式会社

大阪ウェルディング工業株式会社

「中小製造業の中国進出はこうありたい」という本を読んだ。なんてことのない表題であるが、文章も内容もしっかりしている。かなりきちんと取材している様子がうかがわれる。

 
 これは大阪ウェルディング工業株式会社の中国進出物語だ。同社は溶射・表面処理、精密機械加工を手がけている。ポンプインペラ、プラスチック刃物、遠心分離器など中小製造業が手がけている部品を製造している。
 
 
 ウェルディング社は平成13年に上海に進出した。中国進出時には社員数は30名、年商8億円程度の会社だったが、現在では中国国内に130人の社員を抱え、日本工場にも70人となっている。年商も20億円となっている。
 
 この会社の成功物語は、けっして飛び抜けて奇抜な行動があった訳ではない点に特徴がある。進出に当たっては日本国内の自社の市場の動向について協議を重ね、現地の状況を何度も確認し、身の丈にあった範囲で進出を試み、成功を積み重ねることによって徐々に事業を拡大するという作業を行っている。
 
 魚谷社長は「最初から大きな資金を投資しようとしないことです。」という。 「最低限でスタートして、まず毎月のキャッシュフローを、できるだけ早く黒字にする。小さくても黒字にすれば潰れることはない。その後、目途が経てば設備を買い増ししていくというようにすべきです。」
 
 これは本当に当たり前のことだ。  別に海外進出に限られたわけではない。国内であっても、さらには設備投資するときのイロハのイだ。この当たり前の作業を中国でやる際には中国特有の問題につきあたる。本書の魅力は、当たり前の作業を実施することの重要さと、そこに潜む難しさを実体験を通じて語っている点である。
 
 私はこの本からいろいろ得るものがあったが、その中でも勉強になったのがウェルディング社社長のアジア市場の変化に対する考え方だ。世界の動きは激しいが、何も今に始まったことではない。わが国についても見ても、戦後、高度経済成長、オイルショック、リーマンショックと激動してきた。
 
 グローバリゼーションの進展も著しい。富裕層、中間層が増加し、アジアの製造業の質も向上している。こうした世界の動きを中小企業の社長がどのように見ているか、本書はそのことも示している。ウェルディング社は顧客としての大企業動き、その他の日本企業動きを独自の視点から分析する。激動し、融合化するアジア市場のどこに顧客がいるか、その顧客が何を求めているか分析している点は大変勉強になった。