2013.10.07 月曜日

豊橋発:違法な課税は国賠でも可能

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 課税処分は不服のための特別手続きが用意されている。これは期限が厳格だったり、行政不服審査が前置だったり、いろいろ制約がある。

 違法な課税処分に対して、税務訴訟とは別に国家賠償請求によって支払いすぎを取り戻すことができるだろうか。
 
 最近、次のような事例で最高裁判決が出された。  事案は倉庫業者の事例だ。倉庫では「冷凍倉庫」だと固定資産税評価額が小さくなる。しかし、「冷凍倉庫」を単なる「倉庫」として評価された結果、評価額が高くなり、固定資産税が過大になった。そこで、過大分の賠償を求めた事例だ。倉庫業者は過大部分の差額の損害賠償請求した。
 
 最高裁は固定資産の価格を過大に決定されたことによって損害を被った納税者が地方税432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟の手続きを経ていない場合における国家賠償請求を肯定し、これを否定した原審に事案を差し戻した(最判一小H22.6.3判決、判時2083号、71頁)。
 
 この議論は公定力という難解な議論が関係している。戦後間もないころの権威主義的な考えからは行政が決めたことは何でもまず従えという考え方で公定力が論じられた。つまり、裁判で行政処分が取り消されない限り、行政処分は合法であることを前提にものごとは進めなければならないという考え方だ。この考え方を徹底すると、違法な課税処分でも、まずは許されていることになる。国家賠償請求はその判断と矛盾することになるから許されないことになる。
 
 これに対して、行政行為は手続きの積み重なりであるから、その手続きの流れの中では尊重しなければならないが、別の手続きであれば必ずしも尊重する必要は無いという考え方がある。これは実務的にはフィットする。法律というのは条文や手続きごとに独立して考えるというのが一般的だ。最高裁もこの立場をとっている。
 
 ところが、税金訴訟ということになると議論はさらにややこしい。  というのは払いすぎた税金は特別な手続きを経て取り戻すべきであるという考え方で法制度ができあがっている。国家賠償請求によって別に取り戻すことができるというのであれば、何のために課税に対する不服手続きが用意されているか分からないではないかというのである。
 
 倉庫の事例の1審、2審はこの考えから、国家賠償請求を否定した。  しかし、最高裁は原新判断を採用せず、国賠ができるとしたのである。妥当な判断だと言える。
 
 ところで、最近の若手裁判官は行政事件について保守化している気がする。特に公定力論を振り回して請求を却下する裁判官に出会うと、こいつは何も考えていないなと思ってしまう。公定力というのは行政法用語で条文にはない。行政権力を絶対視する公定力論は民主主義にはなじまない。司法は行政に対してコントロールする任務があるが、公定力の強調はそれを放棄する者と言える。その意味でも、この判決の意義は大きい。