2013.10.15 火曜日

豊橋発:脊柱管狭窄症と素因減額

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 首が長い人は「むち打ち症」被害を受けやすい。だから、賠償額を減らすべきだというとんでもない議論がある。

 
  つまり、被害が大きくなったのは首が長かったせいで、交通事故だけじゃないという考え方だ。これは首の長い人は世の中に住んではいけないといわんばかりの意見で、こういう考え方に苦しめられる交通事故被害者は多い。
 
  こういう問題を私たちは「素因減額」と呼んでいる。「素因」とは事故前からあった被害原因、「減額」というのはもともとあった原因の分だけ金額を下げるという考え方だ。
 
  むち打ち症や腰椎症などでよく問題になるのは「脊柱管狭窄症」だ。脊椎を通っている神経の束は「脊柱管」という管を通っている。この脊柱管が事故で圧迫されると、当然、その中の神経も圧迫され傷害される。これが事故後、首が痛い、腰が痛いという症状をもたらす。
 
  生まれつきこの脊柱管が細い人は、首や腰に障害を受けやすくなる。交通事故ではもともと細くて事故が起こったのだから、もともと細かった分だけ賠償額を減らすべきだというのが、ここでの問題だ。
 
  この素因減額と身体の関係で、判例は次のようになっている(最3H8.10.29、判タ931.164頁.)。  「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害額算定に当たり斟酌することはできないと解するのが相当である。」
 
 つまり、身体の特徴は原則として減額の理由とするべきではないというのがこの判例の意義だ。何か特別なことがあるような場合には、ある程度は考えましょうとしている。 この特別の事情は何かというと、広く、公平の見地から決められるとされているが実際に難しい。弁護士の腕の見せどころであるとも言える。