名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.05 水曜日

歳とっているから賠償額減額・・?

MRI画像においてヘルニアが確認され、しびれなどの神経症状の原因が当該ヘルニアにあるとされたとして、後遺障害による逸失利益の損害賠償請求する際、被害者の年齢が高いとき、「素因減額」として賠償額が減額されると言われることがあるかもしれません。
素因減額とは、事故によって損害が発生したが、被害者が元々有していた疾患などがその損害の拡大に寄与している場合、損害の公平な分担という見地から、一定の割合で加害者が負う損害賠償義務の額を減額するというものです。
たとえば、もともとむち打ち症状を有していた人が、事故によってその症状が悪化したような場合、もともと被害者が有していたむち打ち症状も損害の拡大に寄与していえますので(もちろんケースバイケースですが)、その分は損害賠償義務の額を減額するというものです。
この素因減額の考え方に基づき、上記のような、高齢者が事故によってヘルニアになり神経症状が発生したような案件で、「高齢者だから当該ヘルニアは加齢性によるものではないか。一定割合で減額されるべきではないか。」などと言われることがあります。
実際、私が担当した裁判においても、裁判官からそのように言われたことがあります。
しかし、加齢的変性については、事故前に疾患といえるような状態であったことが認められない限り、減額要素として斟酌されるべきではありません。
当該年齢の人間に通常みられる加齢性の変化ないし個体差の範囲内の加齢性の変化を理由に減額するのは相当ではありません。
裁判実務においてもそのような考え方が確立されつつあるようです。
リーディングケースとして、最判平成8年10月29日民集50巻9号2474頁は、以下のように述べています。
「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないと解すべきである。けだし、人の体格ないし体質は、すべての人が均一同質なものということはできないものであり、極端な肥満など通常人の平均値から著しくかけ離れた身体的特徴を有する者が、転倒などにより重大な傷害を被りかねないことから日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合は格別、その程度に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものというべきだからである。」
ですので、保険会社から、「高齢者なのでヘルニアは加齢性による可能性が高い。一定割合で減額されるます。」と言われても、安易にこれに応じてはいけません。
まずは、裁判はもちろんですが、示談交渉においても、正しい知識を身につけなければなりません。