名古屋E&J法律事務所ブログ

2018.02.14 水曜日

交通事故 「無職の人には逸失利益はありません。」?

 損保の事故担当者がまれに、「無職者には逸失利益はありません。」と平気で言う例がある。いまどきこのような言い分は通用しない。
 
 しかし、裁判の場になると、損保側代理人は必ず、同じような議論をしかけてくる。事故後に給料が減ったかどうか必ず確認してくる。逸失利益は「将来収入が減る」ことを賠償しろというものだから、現実に減っていなければおかしいという議論だ。このような考えは差額説と言われる考え方だ。
 
 最高裁は差額説に立っている(最判S39.1.28、民集18.1.136)。しかし、差額説と言っても逸失利益は将来の損害を見積もるという作業であることを忘れてはならない。今、仮に減額が無くとも、本人の努力、周りからの配慮によって現実の収入が維持できたとしても将来の収入が維持できる保証はない。
 
 将来予測という作業は、実際には証拠が乏しく、被害の実態を考慮して常識、良識に従って判断するほかはない。
 
 つまり、「不確実、不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に」損害を算定する。今の要素のみで判断することは誤りだ。だから、たとえ、給料が変わらなくとも実際に就労に支障を来しているのであれば逸失利益を認める。
 
 無職者であっても、将来就職する可能性があれば、逸失利益を認める。
 私の経験した例で、統合失調症が発症して閉鎖病棟にいる患者の事例があった。これは病院の管理ミスにより重大な事故にあった。病院の代理人は閉鎖病棟にいる患者に逸失利益はないとしたが、私たちは統合失調症患者に対する偏見だとし、働く方法はあると主張した。裁判所は私たちの主張を入れ、逸失利益を認めた。