2015.03.27 金曜日

豊橋発:債権譲渡と会社分割

債権譲渡と会社分割

 会社分割とは文字通り会社を分割するもので、1つの会社が2つ以上の会社になる場合を言う。新しい会社にどんな財産、どんな債務を移すかはかなり自由に定められる(会社法789条1項2号、810条1項2号、828条2項9号、10号など)。
 
 たとえば、借金はもとの会社に残し、財産は新しい会社に移すということも許されてしまう。債権者にしてみればもぬけの殻になった会社に対して何も請求できないことになって大きな損失を被ることになる。
 
 こうした会社分割制度の特徴を利用して、事業再生に利用される例も少なくない。根雪のように積もった借金を切り捨てて事業再生に使うことはありうることだ。しかし、事業再生と言えば聞こえはよいが、借金を踏み倒すことには変わりない。企業分割を利用して事業再生を図る場合であってもある種の謙虚さ、債務者に申し訳ないという姿勢は必要だろう。
 
 ある会社は企業分割によって資産の96%に当たる6億円相当の財産を新設会社に移し、5億5000万円の負債は分割会社に残した。新会社は目的も事業内容も従業員も社長も同じだ。残された銀行としては憤懣やるかたないだろう。
 
 この会社は、企業分割によって預金を承継したして預金債権の請求を銀行に行った。しかし、この虫のよい請求に対しては裁判所は請求を退けた。
 つまり、会社分割前であれば銀行は自らの債権(会社の借金)と相殺ができた。裁判所はこうした事情を考慮して会社分割前事情を考慮して分割前にできた相殺の主張をもって、新設会社に主張できるとしたのである。
 
 この理屈は債権譲渡に関する判例を応用したものである。つまり、債権譲渡を行う場合、譲渡人から債権者に対して通知が必要である。通知がなければ、譲受人が債権を請求しても債務者は支払いを拒むことができる。また、通知前の事情をもって対抗できる。つまり、通知前に相殺できたのであるから、相殺できると主張できる(民法468条2項、最判S50.12.8)。
 
 この相殺に関する考え方は私たちの間では法学部で最初に習うような判例だ。今回の会社分割に関する判決はこの468条2項を類推適用して銀行を勝訴させたのである(東京地裁H22.22.29、判タ1352号215頁)。