2015.03.27 金曜日

豊橋発:契約上の説明義務

契約上の説明義務

 弁護士の世界は説明義務は大きい。弁護士と依頼者とは委任契約と言われており、委任契約の一つとして説明義務、報告義務が定められている(民法645条)。最近、民法改正の動きがあって、この説明義務の位置づけについていろいろ議論が出ている。
 
 では一般の取引社会において説明義務はどのように位置づけられるだろうか。契約当事者間では自由競争の建前だから自分の責任で情報を収集し、自分の責任で契約を締結するというのが本来の建前だろう。従って、一般取引ではいつも説明義務があるある訳ではない。もちろん、積極的にウソを言うことは許されない。しかし、知らないということに乗じることは許されるというのが原則的な考え方だ。
 
 たとえば、M&Aのような経済人同士の取引のような場合、判例の傾向は積極的な説明義務を否定する。嘘を言うことは許されないが、わざわざ取引上不利な情報を提供する義務はないと考えるのである。そこで、M&A契約などでは表明保証条項と言われる条項を入れる。これは、たとえば資産の状態や負債の状況、簿外債務の有無と言った事項について正確であることを保証するというものだ。事実と異なる場合には「補償」という名の賠償責任を負担する。こうすることで、当事者は「嘘」と言われないように説明することになるだろう。
 
 金融取引においても説明責任が問題となりうる。資産の状態はなかなかわからない。貸したのだがすぐにつぶれてしまったというような場合、騙されたと思うだろう。しかし、情報を正確に収集しなかった者が悪いとされるし、リスク評価を誤ったことの責任は貸し主が負担することが原則である。
 
 こんな事例もある。銀行が何らかの融資保証するような場合に、それを信じて取引をして潰れてしまったという場合に、銀行に責任追及できるかと言えばそうでもない。リスク評価は自分の責任で行えと言うのが判例の傾向である。
 
 不動産取引でも表明保証あるいは説明義務が問題となる。
 地下に有害廃棄物があったような場合には不動産価値は著し下がるし、撤去費用も膨大になることがある。そのようなリスクを避けるために売買契約書に廃棄物などに関する条項を入れておくのだ。売り主は買い主に対して、地下の状況などについて説明しておかなければならなくなる。
 
 製造物責任でも説明義務は問題になる。
 製造物責任は「欠陥」による被害を賠償するものであるが、何が欠陥かとなると難しい問題がある。マニュアルを正確に作り上げ、マニュアル通りであれば安全であればたとえ事故が生じたとしても欠陥とは言い難い。一方、マニュアルが不十分であったり、なかったりした場合には危険な製造物は製造物責任の対象になりうることになる。
 
 こんにゃくゼリーについて「ゼリー」と誤った説明をして、あたかも口の中ですぐに溶けてしまう柔らかい食べ物であるかのような印象を与えればそれは製造物責任の対象となる。小パックの食べ方について説明の仕方を誤り、消費者が一気に飲み込んでしまうような状態は「欠陥」がある状態となる。
 
 消費者や労働契約の分野でも説明責任は重大である。
 消費者は通常情報量に乏しく、判断能力にも乏しい。そのため、自分で情報を集めろ、自分でリスク評価しろというのは酷だ。そこで、説明義務を課して、情報の偏在を防ぐ手立てが講じられる。最近は消費者保護法系の説明義務は非常に厳しく、これを怠ることが企業にとって命取りになることもある。