名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.05.26 木曜日

M&Aにおけるリーガルチェックの重要性

 後継者がいないとか、債務がかさんで会社を処理したいというときにM&Aが利用されることがある。事業譲渡を行ったり、吸収合併などを利用する。

 
 この場合、会社を清算したり、破産させたりすることもできるが、事業が存続する点ではM&Aは価値あるものとなっている。ライブドア事件があって、こうしたM&Aに対して懐疑的な見方も出ているが、私はM&Aは有益だし、企業の成長速度を速めるために有益な手法だと思っている。
 
 最近ではM&Aの市場もけっこう発達して、ウェブで検索するといろいろな仲介企業がある。倒産会社が事業を切り離して、競争入札方式で売却することもある。
 
 ところで、企業価値を決める上では専門の業者が行うことになるのだが、対象となっている企業価値は企業が保有している資産、負担している債務の状況、企業の将来性などによって判断されていく。
 
 M&Aのような高度な経済活動においては買主側にも高度な専門性が求められ、企業価値把握のリスクは自己責任で引き受けることが求められる。売主には売買に影響を与える情報を積極的に提供する義務はないとされている(大阪地裁H.20.7.11、判時2017号154頁)。
 
 しかし、そうは言っても、企業内部情報を買主が的確に把握することは不可能に近いために、M&Aの約款では買主に情報提供義務を課し、提供された情報については「表明責任」と言われる条項がつけられることになる。
 
 当然のことながら、企業が大きくなればなるほどこの表明責任に伴う損害は予想以上に大きい。例えば、M&Aにおいては移転に伴う様々な法律問題が生じることになる。それをうまく処理していないばかりに、債務不履行責任、瑕疵担保責任、表明責任といった責任が生じる。
 
 上記の大阪地裁の事例はある企業が実質20億円で取引された事例であるが、企業価値は無価値であったとして20億円そのまま賠償するというものであった(請求棄却)。また、ある事例では、店舗の保証金返還に関連して期待されただけ戻ってこなかったことを理由に1700万円を超える賠償責任が認められている。ちなみに、これは債務超過会社のM&Aあったために、売値は500万円である(東京地裁H19.7.26、判タ1268号192頁)。
 
 このように、M&Aに関する紛争では情報提供に関連するものがかなり多い。それに関連する賠償額はたちどころに売買額を上回ることもある。一方で、会社という企業体は様々な法的ルールによってできあがっているといっても過言ではない。こうしたルールについて全ての点をきちっと検討しなければならず、弁護士や会計士などの検討が欠かせないのである。