名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.06.13 月曜日

打切補償と解雇

 労基法81条、労災によって休業を続ける従業員について打切補償制度を設けている。その内容は次のようなものである。
 
「第75条の規定によつて補償を受ける労働者(労災による補償)が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。」
 
 この打切補償をした後に、従業員を解雇できるかどうか争いになった事例がある。
 この事例の従業員は過労によりうつ病となり、6割給付を受けて療養を続けていたが、打切補償を受けた後、解雇された。
 
 尚、この会社には「療養開始後3年を経過しても当該負傷または疾病がなおらない場合」で打切補償を受けているときは解雇できる旨の就業規則があった。本件はこの就業規則によって解雇したのである。
 
 解雇後、従業員は労働組合に加盟した上、解雇無効を争った。原審は地位保全を認めず、控訴審もこれを支持した(東京高裁H22.9.6、判タ1347号153頁)。判決は特に権利の濫用に当たるような特別な事情が内限り解雇は有効だとしたのだ。当該社員が永遠になおらなければ会社は永遠に補償しなければならないことになるが、そのようなことは不合理だとしたのである。
 
 社員が労災から中々復帰できない場合がある。社員の幸せを願う中小企業に取っては非常難しい問題となる。労災を理由に解雇することは難しい。だからといって、中小企業では十分働けない者を雇う余裕はない。企業の立場であっても、できるかぎり従業員の雇用を確保するための努力をすることになるだろう。