名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.05.30 木曜日

M&A、買主の説明責任

 M&Aは一回限りの高額な買い物だ。しかも、商品は「会社」というよく分からない「物」だ。一般に物というと有形物を言うが、会社の場合、組織という抽象的なものということになる。

 
 買主としては内容がどうしても分からないということになる。内部情報は買主の説明を求める外はない。そこで、買主がどこまで説明責任を負担するかはM&Aでは非常に重要な争点だ。
 
 世の中はいつも対等な当事者同士の取引とは限らない。弁護士と依頼者、医師と患者などは典型だ。知識や情報量に圧倒的な差がある場合、法律は対等な当事者関係を実現するために説明義務というものを認めている。よく説明して、相手を納得を得なさいというものだ。
 
 M&Aや銀行融資などの説明義務は少し局面が異なる。
 それは「情報の偏在」を是正するべきかという問題に帰着する。企業価値に着目して資金を投入する点ではM&Aや融資はよく似ている。しかし、内部情報はよく分からない。「黙っているなんてひどいじゃないか。」ということが通用するかが問題となる。
 
 このブログでも紹介してきたが、判例の立場は「企業は相互に対等な当事者として契約を締結するのが通常」という立場である。つまり、積極的な説明義務は負わないというものだ。取引に入るものが自分で調べなさい、相手が黙っていても違法ではないという考え方だ。
 
 ややこしいので説明は省略するが、企業取引は対等な当事者なので自分の責任で情報を集めなさい、一方が黙っていることは許される、相手が勘違いしていてもそれは相手が悪いのだということになる。
 
 でもウソを言うことは許されない。また、当事者双方が前提事実として合意した事実に反する状況が出てきたのに黙っているのは信義に反しているので説明義務が発生しうる。私たちの業界では「表明保証責任」としたり、「先行行為に基づく信義則上の責任」と説明したりする。
 
 判例タイムズ1350号ではM&Aにおける情報開示責任について論文が掲載されていた。また前半だが買主の説明義務に関する判例を4つほどあげてわかりやすく整理されている。この論文では説明義務を次の局面に分類している。
 
 ① 買収者が特定の事項について殊更に責任を求めた場合
 ② 買収者に対し、客観的事実と異なる認識を形成させる内容を説明していた場合
 ③ 買収者が特定の重要事項について誤った認識を有していることにつき、契約相手方が悪意(知っているという意味)である場合。
 ④ 買収者から特段の情報提供要請もなく、買収者において客観的事実と異なる認識を有している場合。