名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.06.12 水曜日

内定取消し、内々定取消し

 内定は判例上、労働契約が成立したとされている。そのため、内定取消は解雇に当たり、厳重な労働法規が適用され、理由無く解除することはできない。内定の内定、内々定は契約とは言えない。しかし、企業が了解した以上、応募者としては雇用されるだろうと期待する。こうした期待を裏切った場合には不法行為となり賠償責任を負うことがある。

 ある企業では適性検査や面接試験を経て、人事担当者から平成20年7月3日に内々定の通知を発した。これは正式な内定通知は3ヶ月後である10月1日に送付されるという通知だ。ところが、9月30日になって、この企業は内々定を取り消した。応募者から見れば、内々定を得られれば内定は得られると期待するだろう。直前になって内々定取消というのはいかにもひどい。
 
 企業側の言い分は景気悪化により経済事情が激変したためにやむえず行ったという。しかし、裁判所は内々定取消を決めたのは8月であり、通知が遅いため、経済事情の悪化は理由にならないとした。
 
 内定については労働契約であるという判断が定着している(最二S54.7.20、判時938号3頁)。内定取消は正当事由が必要であるため一方的にはできない。上記のように経済事情の悪化というのであれば整理解雇の厳しい要件を満たさなければならない。もちろん、内定者と、就労した者とはそれなりと取り扱いの差がある。例えば、試用期間といった内容を持つかも知れないし、経歴を詐称したような場合などは考慮される可能性がある。
 
 内々定は法律上は、契約は成立していないとされている。難しく言うと労働契約、労働契約の予約など法的拘束力ある契約はないとされている。要は商談不成立と同じで、縁が無かったということですまされる。しかし、本件のように内々定で期待させておきながら直前で取り消すというのはひどいというので、信義則(相手の期待権を侵害してはならない)という考えから企業の責任を認める場合がある。
 
 保険でも信義則上の付随義務を理由に賠償を認めた(福岡高裁H23.2.6、判時2121号137頁)。その金額は22万円であるが、企業イメージに対するダメージ、組織内の不審、訴訟の経費などを考えると22万円では済まない損害が企業には発生したと思われる。
 
 本件では内々定の時点で取消の可能性があることを伝えたり、あるいはもっと早期に取消を通知していれば、このようなことにならなかったかもしれない。