名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.08.10 水曜日

銀行の説明責任

バブル経済盛りのころ、銀行員が不動産投資やゴルフ場開発投資の話をよくもってくることがあった。ある会社はこれに乗らず、ある会社はこれに乗ったりし、中には話が違うこともあった。

 
 絶対にもうかるからなどと言いながら、実際には大赤字になったなんて話は珍しいことではなかった。こうした場合、話を持ってきた銀行に責任はないのだろうか。判例時報2132号にこうした事例について紹介してある。
 
 ある不動産業者はマンション建設を計画して銀行から40億円融資の内諾を取り付けた。実際に10億円の融資を取り付けマンション建設に着手した。ところが、30億円の融資は得られなかった。この30億円貸さなかったことについて損害賠償を求めたが認められなかった(東京高裁H11.10.20、判タ1039号148頁)
 
 支店長に区画整理事業の10区画の保留地の購入を強く勧められ、1億5000万円の融資ができると言われたことから購入に踏み切ったのであるが、実際には融資が得られなかった。
 
 この会社はこれがもとで資金繰りが悪化し事実上倒産状態に陥った。このような会社に対して、銀行は既存の融資の返済を求めてきた。実に血も涙もない対応だ。
 
 裁判所は1億5000万円の融資について支店長が強く勧めてきて、様々な資料まで提出要求してきた上で融資を約束したことから、この会社が融資を期待することはやむ得ないとして支店長の責任を認めた。もっとも、この場合の賠償額はあまり大きなものではない(東京地裁H13.7.19判時1780号116頁)。
 
 銀行は地域に根ざし、地域で活動する多くの事業者と事業者を結びつける役割も果たす。有能な行員はこうした人間関係を作ることがうまいとも言われている。一方で融資実績を獲得するために無理な事業を勧める例も少なくない。
 
 銀行員は手堅い。堅実だ。内部的なコンプライアンスもとれている。銀行員を信用することはけっこうなことだ。しかし、銀行員が手堅いのは融資に関する問題だけだ。彼らは事業の専門家ではない。決算書を読むことはできるが事業の見通しや為替相場を見通すことはできない。この点を勘違いして、銀行員なら何でも専門家だと思ってはいけない。事業者ならきちんと自分の頭で判断することが必要だ。