名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.10.11 火曜日

中国法令

中国と日本とは違う。何でも日本の通りだと思うと大間違いだ。中国は巨大官僚国家で,国家権力に近い者ほど融通が利く仕組みにはなっている。それが法規に違反したとしても権力的な力関係の法が優先することがあると言われている。

 
 このようなことがあるからと言って,「権力」を過大視してコンプライアンスを忘れてはならない。中国国内での事業活動ではコンプライアンスはとても重要だ。特に権力が利用されて、自社が不利益を被るような場合は,いろいろ言っても最後は中国法規に従って戦うことになる。中国の権力機構から自社を防衛するためにもコンプライアンスは心がけたい。
 
 中国では猛烈なスピードで法令の整備が進んでいる。WTO加盟以降は特に経済分野でも法整備が盛んに行われた。現在では一通りの法律ができたと言ってよい状態ではないだろうか。そうは言っても今でも中央レベルの法規でも年間数百件制定されているといわれている。
 
 日本の場合,憲法→法律→条例の順位が明確になっている。政府は規則や通達を制定することができるが,それは法律が授権した範囲内のできることになっている。地方政府である自治体も同様に条例や法律の授権の範囲内で規則を決めることができる。政府の規則と自治体の規則が抵触する場合には,法律 vs.条例の上下関係で決まる。この上下関係は私たち法律家の目からみるとかなり明確だ。
 
 中国でも基本的な考え方は同じだ。
 憲法→基本法→一般法→地方レベル法規
 
 しかし,中国の場合,日本のように単純化されていない。
 憲法→基本法→一般法→国務院行政法規,までの序列は決まっている。
 
 国務院(行政府のこと)行政法規→国務院部門規章と順位が決まっている。
 ややこしいのは,地方人民規則(地方性法規)と国務院部門規章とが同等とされていることだ(立法法82条)。その上中央行政と地方行政との関係が十分整備されていない。
 
 そのため,中央レベルの法規と,地方レベルの法規と矛盾した場合には非常に困ってしまう。例えば,国務院(政府)の部門ごとの規則が地方性法規と矛盾した場合には国務院が調整することになっている(立法法86条)。
 
 実際にはどうも調整作業は余り進んでいないようだ。
 そのため,国の施策と地方の施策が矛盾するような場合,現場では管理する権力の強い方に従う,言ってみれば実行支配している方の判断に従うというような取扱になっている。
 
 中国には「経済特区」というのがあって,ここでは中央政府と地方政府のややこしい二重関係を解消して,権限を集中させている。例えば,会社の設立や事業の許可といった作業も通常は中央政府の所轄する項目と,地方政府が所轄する項目と分かれてしまって大変なのだが,経済特区では1つの部門だ処理ができる。
 
 中国のような巨大官僚国家ではこの行政上の事務処理手続きが簡便なのは大きなメリットとなる。