名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.11.07 月曜日

重加算税基礎知識

申告漏れなどがあると加算税が課せられる。これが、故意に資料を隠匿したり、二重帳簿を付けたり、あるいは虚偽の申告などをすると重加算税が課せられる(国税通則法68条)。税と名がついているが、重加算税は税ではない。脱税を理由とした刑事罰でもない。申告の適正を担保するための行政罰というのが一般的見解だ。

 
 ともかく、重加算税は35%とか40%とかかなり重い課金がされるため、争う価値がある。
 国税通則法によると①納税者が、②隠ぺいなどした場合に課せられることになっている。この点、例えば事務員が勝手にやったとか、妻が知らない間にやったとかいうような場合には納税者がやったと同一視されて重加算税の対象となる。
 
 裁判例では、従業員が会社の金を着服する目的で帳簿操作をした場合でも本人がやったと同視して重加算税は正当だとした事例がある(長野地裁S58.12.税資134号581頁)。
 司法書士に申告手続きを一任して、その司法書士が隠ぺいなどした事例でも納税者には「監視、監督」責任があるから本人と同一視できるとして、重加算税を正当とした(京都地裁H5.3.19)。
 
 これらの傾向を見ると、税理士以外の者による隠蔽などについては基本的に本人と同一視できるという考えのようだ。それは、選任、監視、監督責任があるという考え方に基づいている。
 
 これが税理士の場合状況が異なってくる。
 最高裁①H17.1.17、②H18.4.20、③H18.4.25と税理士が申告した事例で重加算税に関する重要判例が相次いで出された。
 ①、③の事例では本人と同一視できないとして重加算税を認めなかった。①の事例では重加算税が認められるためには納税者と隠ぺいなどした税理士との間で「意思の連絡」があったことが必要であるとし、「意思の連絡」があったか確かめるために高裁に差し戻している。
 
 税理士の場合、国が資格を与え、納税義務の適正化をはかる義務を有する者である。納税者は納税手続きの煩わしさから解放され、適法な範囲での節税を期待する。つまり、納税者は納税手続きを委ねること、任せることが社会的にも法的にも許されることであるから、納税者は税理士を監理監督する立場にはないとされる。それ故に、単純に税理士の隠ぺい行為を納税者とは同一視できないのである。
 
 ちなみに、①の差戻審は「過少申告を容認し、」「意思の連絡があったとはいうことはできず」として重加算税処分の取消を維持した(東京高裁H18.1.18)。