名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.11.19 火曜日

中国土地収用と補償

中国進出果たしている企業より中国土地収用についての調査、交渉の依頼があったために現在、調査している。

 中国では都市開発が急激に進んでいる。それに伴い各地で改めて都市計画が作り直され、立退問題が多発している。また、中国では環境規制も急激に進められており、工場などの立地に対しても規制が加わりつつあり、いつ立退を命ぜられるか分からないところがある。中国の都市計画の変更は、まさにチャイナリスクの一つと言える。
 中国国内の都市計画は地域発展基本計画、国土計画、都市農村計画の3つの体系がある上、国家級、区域級(重点区域)、省級と地域レベルの計画が複雑にからんでおり、立退といった問題になると場合によっては15前後の都市計画が関係してくるとも言われている。いずれにしろ、公用の目的で立ち退きが問題になる点では変わりない。中国の場合、ひとたび当局から移転を求められれば、是非もない。余程の権力者と交流がない限りそれを覆すことはまずないと言ってよいかと思う。その場合、専ら補償をどうするかという点に問題点が絞られる。この問題については JETROが簡単なレポートを出している。
 土地収用に関連する法律としては以下のものがある。
① 土地管理法
 中国では土地は原則国有となっている。土地管理法第58条1項では、①公共利益のために土地を使用する場合、②都市計画実施により旧市街地区に対して改築を行う必要がある場合等には、土地行政主管部門は、元の土地使用を許可した人民政府又は許可権を有する人民政府の許可を経て、国有土地の土地使用権を収用することができる旨を規定する。国有土地使用権を収用する場合は、土地使用権者は補償を受けることができるとされている(土地管理法第58条2項)。
② 国有土地上家屋収用及び補償条例
 ところで、中国では公益目的に伴う土地収用問題が多発し、それまでの法律が必ずしもうまく機能しない実態が明らかになった。そこで、国務院は2011年1月19日「国有土地上建物収用と補償に関する条例」(以下「補償条例」)を通じ、公共利益にかかる政府の強制収用による立退きを整理し、あわせて従来の「都市建物立退き管理条例」を廃止した。この新条例制定に伴い、各省、区域などの条例も改変されているが基本的には国務院の補償条例に従うことになる。
③ 補償の対象者
 補償条例では「公共利益の需要のために、国有土地上の法人、個人の家屋を収用する場合、収用対象家屋の所有権者」を収用対象者として扱い、その収用対象者に対して補償を行うことになっている。そのため、建物賃借人についてこの法律によって補償の対象になるかは中国国内においては争いのあるところで、どちらかというと否定的に扱われている。
 実務的には土地使用権者や建物所有者が地方政府と協議して補償金額を決め、補償協定を締結するのであるが、その際に建物賃借人に対する補償についても定めるようである。賃貸人は補償問題については、あたかも賃借人の代理人のように振る舞い、地方政府と交渉することになる。
 借家の場合、結局、立退補償問題は中国法においては基本的に賃貸人と賃借人との関係となり、賃借人がどれほど補償金を得られるかについては、賃貸借契約の趣旨からしていかなる補償を獲得できるかという問題となっている。この点、賃借人に対しても直接補償される日本法とは異なっている。
④ 補償項目と補償金額
 ア 補償条例では補償項目を次のように定める。
    (一)収用対象家屋価値の補償。
    (二)家屋収用により発生した立退き、臨時配置の補償。
    (三)家屋収用により発生した生産、営業停止に伴なう損害の補償。
 イ 各項目の価格については各省などの担当部局が通知を出している。
   建物の価格については政府機関が存在する。その他、地上建物、設備の価値、立退き費用の補償は専門評価会社が評価する。この専門評価会社の選択にあたってはできるだけ優秀で信用の置ける会社に依頼することが大切であり、さらに実際の算定にあたり出来るだけ高く見積もってもらうよう求めるべきである(前記JETRO文献より)。
 但し、現時点では補償条例ができて以降、各省や市レベルで補償基準に関する通知が整備されていると思われる。各都市名、「征收」(収用)、「补偿」(補償)、「标准」(標準)、「通知」をキーワードに検索すれば各都市レベルの補償基準に関する通知が得られると思う。