名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.01.06 金曜日

従業員兼務取締役

社内で徐々に地位があがり、課長となり部長となり役付になっていく。大企業の場合、役員は本当の役員だが、中小企業の場合には役員と言っても、職務内容はそれまでとほとんど変わらないことがある。

 
 法律の世界ではその場合、従業員と役員とを兼務していると言ったりする。その違いはどこに出てくるだろうか。
 
  例えば、従業員の場合、労働基準法があるほか社会保険関係が整備されている。解雇権についても労働契約法によって厳しい制約がある。しかし、取締役の場合、労働者としての保護はない。
 
 気の毒なのは会社が倒産した時だ。役員報酬は労働債権ではないので優先権もないし、雇用保険もない。
 
 しかし、部長から役付になっても仕事の内容は全く変わらない。全ての事項は社長が決め社長から指示が行われる。取締役会もないということになると、役付とは言っても名ばかりで、経営側の実態はないということになってしまう。
 
 そこで、こうした実例では「従業員の地位を兼ねていた」とか、「実際には従業員そのものだった」とか言う形で本格的に争われることになる。
 
 役員の従業員性については次の要素から判断されている。特に管理職との違いがどこにあるかが問題となる。
 
 ミレジム事件(東京地裁H24.12.14労働判例1067号5頁)では「取締役の従業員性の判断基準については、会社の指揮命令の下で労務を提供していたか、報酬の労務対価、支払い方法、公租公課の負担等の有無を総合して判断することになる。」として労働者性を肯定した。
 
以下がその判断要素である。
 
① 会社からの指揮命令関係はどのようになっていたか。
② 就業規則の当てはめはどのようになっているか。
③ 役員にふさわしい報酬はあったか。管理職と区別できるか。社内の賃金規定が適用されていないか。
④ 社会保険料の控除の有無
⑤ 取締役会が開催されているか。
⑥ 退職届が出されているか。退職金が支払われているか。