名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.01.16 月曜日

不動産売主の説明責任

不動産売主の説明義務が果たされていないとして2億2465万9600円の請求がされた事件がある。不動産のテナントから家賃の減額請求されていた事実を隠していたと言った事情が不法行為だというのである。これだけだといかにも不当訴訟で東京地裁は請求を棄却している(H24.11.26、判時2182号99頁)。

 
 不動産取引では売主に一般的な説明義務は存在しないとされている。これは不動産を買う時が買主側で現地を見て、きちんと調査するべきだという原則が働いているからだ。
 
 しかし、売主が宅建業者であるような場合には宅建業法上の重要事項の説明義務を負うほか、契約締結の帰趨を決めるような事項について信義則上説明義務を負う場合がある。
 
 例えば、土地の地下に廃棄物があったとか、建物では過去に自殺者が出たとか、社会通念上契約締結をするかどうかを判断する上で重大な要素となる場合には説明義務が存在する。
 
 収益物件としてビルを購入する場合、入居しているテナントの状況を説明する義務がある。この点、東京地裁は「賃貸借契約の内容はもちろんのこと、賃借人の経済状態、賃料の滞納の有無、過去の賃料改定の経緯」などを基本的な内容は正確な情報を提供する義務があるとした。
 
 さらに、売主に代わって売買の折衝に当たっていた者についても同様の説明義務は存在する。
 
 もっとも、本件は説明義務違反の対象が前記の通り、テナントが賃料減額請求をしていたことを黙っていたというものだから、たいしたことではないということで裁判所は請求を棄却している。
 
 なお、この説明義務の存在であるが、契約条項に瑕疵担保責任を負わないという条項があったとしても責任は存在する。