名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.01.20 金曜日

税理士の責任が認められた事例

税理士にしろ、弁護士にしろ専門家はけっこう高額な金額を扱うので間違いが起きた時の賠償金額も大きい。この事件では837万円の支払が税理士に命じられた(東京地裁H24.12.7判時2185号96頁)。

 
 本件は「消費税事業者選択届出書」を提出すべき時期に提出しなかったため、消費税、過少申告加算税及び延滞税を納めることとなった。この提出がなかったことが税理士のミスだということで、その金額の賠償が求められた。なお、この税理士は業務を無償で引き受けていた。
 
 税理士と顧客との契約は委任契約であることから債務不履行責任が、また、専門家としての義務に違反するということで不法行為責任が根拠となっている。
 
 事案は賃借用共同住宅を建設する事例だ。自動販売機を設置して課税売上を生じさせることにより課税事業者となり、住宅の工事代金にかかる消費税の還付を受けようという計画だった。これはややこしいので、税理士さんにしか分からないかも知れない。
 
 ともかく、当時の制度(平成22年改正)では還付を受けるためには一定の「消費税事業者選択届出書」を所轄の税務署長に提出する必要があった。税理士はこれを怒ったというのだ。期限が遅れたのでは是非もない。残念ながらこの税理士さんは賠償責任を負担することになった。
 
 ところで、本件はもう少しややこしい。
 この届出期間であるが、当時の消費税の取り扱いではいろいろややこしい制約があった。この制約はかなり複雑なのでやはり税理士に頼まないと判断できない。
 
 問題となるのは依頼者は自宅を自社に貸付賃料収入を得ていた。そのため、税理士に依頼した当時から既に課税事業者となっていたのであるが、これを見落としたという点だ。税理士さんは依頼者に収入はありませんかと質問し、依頼者は特にないと応えていたようだ。しかし、依頼者の確定申告には自社に対する賃料収入の記載があった。
 
 判決は言う。税理士には「専門家としての高度な注意をもって委任事務を処理する義務を負う」としている。
 そして、「委任者の説明及び指示のみに基づいて事務処理を行えば足りるというものではなく、税務の専門家としての観点から委任者の説明内容を確認し、それらに不適切な点があって、これに依拠すると適切な税務申告がされないおそれがあるときには、不適切な点を指摘するなどして、これを是正した上で、税務代理業務等を行う義務を負うと解される。」と判示した。