名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.01.26 木曜日

中国撤退・事業再編の動き

尖閣諸島の問題を契機にチャイナリスクに対する企業家の問題意識はかなり鮮明になったのではないかと思われる。私の考えではチャイナリスクの問題点は次の点に絞られているだろうと思う。

 
 ① 年々上昇する賃金、社会保障の問題
 ② 日中の政治的な摩擦に伴う、当局の恣意的な政治的経済介入
 ③ 土地バブルなど中国金融情勢に対する不安
 
 中小企業の場合、いくつかの社会情勢の変化を乗り越えてきたという歴史を持っているためか、中国国内の大きな問題を抱えていても楽天的な気分で乗り越えてきたのではないかと思う。例えば、尖閣諸島問題で反日運動が展開されたとしても「うちの周りではたいしたことはない。」と一部の加熱報道ぐらいでかたづけていたのではないだろうか。
 
 しかし、尖閣諸島問題以降、各地の経済開発区内で、それまで得られていた優遇措置や、当局の前向きな対応が消えてきたという「うわさ話」はよく聞こえてくる。中小企業でも自分の開発区での当局の冷たい対応になんとなく今回の問題は根深いと感じている企業も少なくないのではないだろうか。
 
 いずれにしろ、チャイナにはリスクが明確にあるという認識が企業家の間に広まり、それが「チャイナ+1」という考えに変化しているのだろうと思う。
 
 もっとも、一方で、進展するグローバル経済にあって中国は当然無視できない。中国市場は企業にとって魅力的であることには間違いない。上記のリスクを認識しつつ中国投資は活発であるという意見もある。私の周りでも中国進出に依然意欲的な企業は少なくない。愛知県ではトヨタなど自動車産業が海外への軸足を大きくしつつあるという認識は半ば常識のように語られている。
 
 現在の中国進出の中小企業の動向は、こんなところではないだろうか。
① 撤退を考えつつも、それまで残した人脈、ノウハウは生かし続けて中国市場、中国進出日系企業のお客さんを確保していきたい。
② 中国新進出を果たす一方で、最悪の事態の自体の場合について情報を確保しておきたい。
③ 企業の拠点を台湾やシンガポールに置いて、そこを通じて中国企業をコントロールしたい。
 
 中小企業の場合、実際に中国の撤退は多い。しかし、それは今に始まった話ではない。中国進出企業のかなりの割合がこれまでも撤退し、財産処分や労働問題など深刻な問題に直面してきた。
 
 ただ、今が違うのが、そこそこ進出に成功し、中国国内でそこそこ安定した企業であっても、何らかの形で事業の形態や規模を再編成しなければならないという点で問題意識が違うところがある。それは追い詰められての撤退ではなく、これまでの成功経験を基に事業展開として撤退、再編などを考えているところにニュアンスの違いがあるように思う。