名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.01.26 木曜日

中国「共同富裕」と「世界の工場」の危機

2013年3月、中国全国人民代表大会では習近平国家主席は「貧富の格差縮小を目指す「『共同富裕』の方向へ着実に前進する」と述べた。」。中国では地域間格差は減少しつつあり、医療保障や老齢年金など社会保障制度も進みつつある。

 
 
 「群体性事件」と言われる集団示威行動も増え、2011年には18万件にも及んでいるという。労働争議も増加をし続け、労働紛争調停委員会や基層調停委員会など手続きの利用も増えている。中国最高人民法院でも労働事件の手続きを「解釈」などによって整備しつつある。
 
 ジェトロの報告によると北京市、天津市、河北省など「京津冀地域」の賃金水準は、最低賃金が2012年6月末現在、06年比で約2倍になるなど大幅に上昇しているし、他の地域でも上昇傾向にある。また、上海市における2007年の平均月額賃金は2892人民元であったのが、2011年は4331人民元となり、4年間で約1.5倍になったという指摘もある。
 
 中国賃金上昇は止められない路線であることは言うまでもない。中国は「共同富裕」社会を目指し、所得の倍増を考えているが、それは単にGDPが二倍になるという程度のものではなく、個々の労働者の所得が現実に二倍になると言う政策だ。この政策は今後の中国経済に対して根本的な転換を迫ることになる。
 
 中国は改革開放政策以来、先進国から投資を呼び込み、世界の工場となった。しかし、この世界の工場という意味は、あくまで外資系企業が自社の工場を中国に作ったという意味である。「つまり、『中国が世界の工場になった』のではなく、『世界が中国を工場にした』のだ>(「SAPIO」2012年8月1・8日号)。
 
 つまり、中国は自国資本によって工場を建設し、生産性を上げてきたわけではない。安い労働力を背景に外国資本に依存しつつ経済を発展させた。そのため、世界経済の中で、中国資本が自立した地位を必ずしも持っている訳ではない。低賃金のうまみがなくなるととともに中国から撤退を始めることになる。自立した資本のない中国には世界の市場の中に関与できないまま取り残される危険をはらんでいる。
 
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