名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.02.06 月曜日

弁護士の交渉術

弁護士は交渉がすぐれていると思われがちだ。しかし、交渉術と言っても特別なものがある訳ではない。すぐれた材料、すぐれた理屈、最後は法による担保がものを言う。

 
Step 1 利害得失と目標設定 
  私達が交渉する場合、まず、依頼者の情況から利害の得失を判断して目標を設定する。これは大きな方針を決めるので、細かい議論もするが、それをどこで切り捨て割り切るかが重要となる。弁護士に才能が足りないと、何が重要が解らなくなりやたらと細かくなって方向を見失う。能力のある者ほどシンプルな割り切りができる。
 
Step 2 材料の収集
  交渉には材料が不可欠だ。過去の約束の有無、それを裏付ける議事録、電子メールのやりとり、契約書などの資料。価格決定の根拠、特定の事象がリスクだと思う根拠。
  交渉に入る場合に、相手の利益も配慮する必要がある。この合意をすることによって相手とってもどのようなメリットがあるかも考えることになる。
  この材料収集はできるだけ精緻である必要がある。能力のある者ほどそつが無く、能力の無いものは平気で大きな問題について詰めてこない。
 
Step 3 撤退の限界
  利益には限界がある。私達の場合、最悪裁判になった場合にどこまで勝てるかを見定めることになる。
  この時、私の場合は交渉の成果は「裁判以上の利益」となるかとう点をいつも念頭に置く。
    これは弁護士としての基本的な資質だ。法律や判例、学説を精通しないといけない。しかし、弁護士は総ての法律、判例を知っているわけではない。法律を貫く基本的な原理、たとえば取引の安全、対価的バランスといった原理に照らしておかしいかどうかを考え、その上で法律、判例を調べていく。これは勉強できないとまずい。
 
Step 4 心理的な読み
  交渉に際してはものごとを決めるステークホルダーいる。キーパーソンだ。彼らが何を基準にものごとを決めようとしているかを読んでいく必要がある。
  私の感覚では、交渉過程は双方の心理的な「勢い」というものがあって、交渉過程ではこの「勢い」と「勢い」とがぶつかり合って、ある種「平衡」が生まれる。この「平衡」に対する見通しが心理的な読みを決めるような気がする。
  なにか抽象的でわかりにくいが、「落としどころ」と呼ばれる状態に対して常に予測し、「勢い」と「勢い」とがぶつかり合う「潮目」のようなものを見定めていくようなところがある。
 
Step 5 心理的なタフさ
  裁判でもなんでも一定期間を持つ問題は常に紆余曲折がある。私達は一喜一憂するが、ぶれない精神的なタフさが常に求められる。弁護士はたくさんの事件を扱い、時には長い時間をかけて戦うので、こうしたタフさは経験を積む毎に鍛えられていく。