名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.02.15 水曜日

新技術、新アイディアと市場の創出

 私の知り合いの会社では中小企業ながらLEDに早くから注目し、LED照明器具を開発していた。そこに、大手家電メーカーが目を付け、共同開発を申し入れてきたという。しかし、社長はこれを断った。大企業にいいとこ取りされて取り残されることを心配したのだ。一方でLEDは軌道に乗り始め、独自の市場を築きつつあったというのも断った動機の一つだろう。
 
 大企業の場合、既にコアな技術が存在し、開発部(R&D)も確立している。優秀な人材もそろっている。過去も現在も多くの開発に成功し、利益を生み出している。しかし、大企業のほとんどはそれでもなお社外にイノベーションの「種」を求めて動いている。
 
 現代社会は世界のあらゆる場所でイノベーションが起こりえる。インターネットなどで結ばれた社会では世界のどこかで生まれた技術革新が世界のどこかの大きな企業がこれを取り上げ、たちどころに世界を席巻する可能性を持っている。グローバル社会では革命的なアイディアを生み出した小企業が、突然世界をまたにかける企業に成長するチャンスも持っている。
 
 そのためか、大企業はここ何年も社外のイノベーションに対していかに敏感に反応するかを組織的に模索してきているように思う。これは社内の研究会部門の中でも埋もれたアイディアがあるかもしれないし、社外の中小企業の中にあるかもしれない。大学の研究部門もアイディアのイノベーションの「ハンター」「ギャザラー」にとっては重要な位置づけを持つ。
 
 有益でおもしろい新しいアイディアはいくつもあるだろう。しかし、だからといってすぐに市場に受け入れられるとは限らない。初期のアイディアは不完全で、見劣りがし、さらに効率的な生産とも結びついていないことが多い。こうしたいろいろなところに埋もれているアイディアがいかに市場と結びつくかが最も難しいところだ。
 
 そこでは、イノベーション「種」が発見され、市場との結びつきを模索される「育成」という過程を効率よく組織化することが課題となる。それは実験のようなもので、アイディアが市場と対話し、徐々に製品化され量産化されていくという過程ということになる。
 
 大企業が中小企業の持っている社外アイディアに注目するのは、単にアイディアがほしいというだけではない。それが、現場でどれくらいものになっているかを探りたいという気持ちあるはずだ。中小企業が持っている新技術が実際に中小企業によって市場を作りつつあるか、市場が求めていると言えるか、これを確認したい、うまくいっているならとりこみたいという考えを持っているはずだ。
 
 一方で、中小企業はアイディアの「原石」は持っていても、それを市場に結びつけるだけの資金やノウハウ、組織体制もない。一定の利益を譲歩してでも大企業と手を組んでいくか、がんばって独自の市場を開拓していくかを選択する必要がある。実際、うまく手を組めれば企業が飛躍的に拡大するチャンスを得ることもある。
 
 中小企業法務の立場からすれば、イノベーション初期の段階で中小企業の利益をいかに確保していくための法的枠組の研究が不可欠となる。特許など知的財産の所有の関する契約形態のあり方やなど、アイディアの成果のあり方を具体的に特定し、契約等によってその利益を固定化すると言う作業ということになろうか。
 
※ この記事は、「オープンイノベーション」(英治出版)のジーナ・コラレッリ・オコナーの論文を参考にしました。