2017.08.21 月曜日

豊橋発:「品質」ばかりが差別化ではない。その本当の意味

マイケル・ポーターは「『品質』は会社の特異性を売るにはあまりにも狭い見方である。」という(「競争の戦略」)。

 「というのは,買い手にインパクトを与えうるには,さらに広範な価値活動が必要であるのに,『品質』は製品だけに注意を集めているからである。」

 差別化するには製品だけではうまくいかない。日本の中小企業は高技術だけで営業しているわけではない。ジャストインタイムで納品するという神業を持っている。これは品質とは別の要素が差別化を作りあげていることになる。

 ポーターは差別化をバリュー・チェーンという言葉を使って説明する。企業活動は内部でも,外部でも多くの関係でなりたている。この関係の連鎖をバリュー・チェーンと呼んでいる。ジャストインタイムで言えば,部品の売り手と買い手が密接な関係を築き上げ,情報を共有することで価値が創造されている。これは共同と調整の最適化が競争優位を招き,差別化が成功する要因となる。

 このように,差別化の意味は「品質」にとどまらない。
 ポーターは差別化を「基本的には,会社が買い手の価値連鎖にインパクトを与えることによって,買い手のために価値を創造することなのである。」という。

 ここで生み出された価値は買い手の実績を上げることになるし,同時に売り手の競争優位をもたらす。これはウィン・ウィンの関係ということになるが,もちろん世の中はそれほどきれいにはいかない。

 関係の中で生み出された価値がどのように分配されるかは,相互の競争関係の中で決められていく。お互い儲かるということがあっても,お互いどの程度儲かるかという点では競争関係,対立関係は存在する。

 中小企業から言えば,ジャストインタイムを実施して,在庫管理コストの低減という価値は当然中小企業側にも分け前として分配されなければならない。この点は競争関係にということになる。

 もちろん,バリュー・チェーンのあり方は多様だから話は単純ではない。しかし,ポーターの次の文章は,こんな考え方も確かにあるだろうなという気持ちにならないだろうか。

「会社が他社と差別化できる1つの仕方は,買い手のやるべき活動を他社よりもはるかに多く引き受けることである。極端な場合には,会社が完全に買い手の業界に参入する」

 たとえば,倉庫業,最近は仕分け,包装など様々な仕事を引き受けて自社の差別化を図っている例なんかが浮かんできてしまう。