2017.09.11 月曜日

豊橋発:納品,検品の落とし穴(契約条項に注意)

大量承認を継続的に取引する場合,検品をどうするかは重要な問題である。この検品について具体的な定めを置いていないため,いざトラブルになった場合,思わぬ損失を被ることがある。


 量産品を納入する場合には全量検査をすることは難しい。多くの場合に抜取検査が実施されている。

 東京地裁H25.12.4判決の事例(判時2245号52頁)では電圧式スピーカー等の製造契約が締結された事例だ。原告は香港設立の有限公司であり,被告は日本の音響機器製造メーカーである。原告は未払い製品代金2億3174万0228円を請求した。

 これに対し,被告は抜打検査の結果,いくもの製品に不具合があったため,不良品が納入されたため代金支払いの義務はないとした。
(不良品納入を理由とした契約解除)

 これに対して,東京地裁は,抜取検査によって不良品が生じたからといって代金支払いを拒むことはできないとした。

 というのは,裁判所は受入検査では抜取検査が行われているとは認定したものの,両者間での取引では不良率をどの程度のレベルとするかについての合意もないし,さらに一定の不良率が発症した場合,契約をどのように処理するかについての定めもないため,不良品が出ても直ちに解除できるものではないとしたのである。

「本件のように当事者間に取引全体を解除し得る不良率について具体的な合意がない場合には,納品された製品を全体として見て,債務の本旨に従った履行とはいえない程度の不具合が存在することが,当該製品に係る取引を解除するために必要であると解するのが相当である。」とした。

 なお,被告は「JIS規格の定める基準に従い,AQLを0.65とする抜取検査の基準を満たすことを要」する旨合意していたと主張したが認定されなかった。

 この事件の教訓はやはり抜取検査の水準について定めていなかったことになるだろう。この場合,契約書には次の項目が検討されることになる。
 ① 抜取検査の水準
 ② 一定水準に達しない場合の処理
 ③ 特に契約解除が可能かどうかの定め


※1 抜取検査のレベルについてはJIS規格が一定の基準を設けている。商品品質についてはISO9000シリーズが定めており,JISもそれにならって抜取検査基準を改定している。抜取検査基準については厳しくすれば品質は向上するかも知れないが,検査コストが上昇することから,商品ごとに調整されることになる。

  詳しくはこちら

※2 JISZ9015-1(我が国では標準的に採用されている方式)
   計数値検査に対する抜取検査手順-第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式。
   Sampling procedures for inspection by attributes-Part 1:Sampling schemes indexed by acceptance quality limit (AQL) for lot-by-lot inspection