2018.04.09 月曜日

豊橋発:役員の退職金

 退職金規程には会社の経営状態によって変動することがあり得るという内容の条項を入れておくことをお勧めしたい。

 取締役の退職金は役員報酬の後払いの性格を持つ。役員報酬は株主総会できめなければならないとなっている(会社法361条1項1号)。もっとも,株主総会決議によって,決定を取締役会の決定にゆだねることができるとするのが判例だ(最判S58.2.22判時1076号140頁)。取締役会は退職金の基準を定めることによって,退職金の金額を決めることができる。

 今月の「ビジネス法務」8月号では退職金が減額できるかという記事が掲載されていた。

 私が経験した事例で,長年会社に貢献した社長ではあるが,退職金支払時に会社の業績がかなり悪化していたために退職金が払えないという事例があった。この事例では退職金を無理して払ったために会社が倒産寸前までにいたった。幸い,スポンサーを見つけてきて,会社を売却することによって切り抜けることができたのであるが,退職金の減額の問題は実務では意外に大きな問題だ。

 退職金規程に減額規定や不支給規定がある場合は問題は無い。
 一旦,株主総会や取締役会で支給を決定してしまうと,退職金請求権は発生してしまい,減額することはできない(最判H22.3.16判タ1323号)。

 問題は,減額規定のない退職金規程ではあっても,業績悪化によって株主総会決議によって減額できるかという点にある。

 「ビジネス法務」筆者である弁護士は可能だと考えている。確かに役員報酬は株主総会決議事項であり,会社の業績を考慮して決めることは可能だ。いわばオールマイティのようなところがあっていかようにも決めることができる。

 従って,退職金規定がありながら,会社の特殊事情から退職金を減額するということは十分あり得ることだ。

 しかし,ことはそう簡単ではない。退職金規程があることが前提に取締役になっているような場合,退職金規程が長年利用されてきたような場合,取締役と会社との契約,取締役就任の契約があったとも考えられるような場合には減額は難しくなる。

 このため,役員報酬規定には減額可能である旨の記載は不可欠だ。もっとも,取締役の立場からすれば逆になる。