2018.07.16 月曜日

豊橋発:税務上、収益の帰属は個人か法人か?

個人の収益を法人の収益だとしたり、その逆があったり、税務上収益の帰属はしばしば問題となる。最近、個人事業として行った不動産取引を法人取引であるかのように偽り、収益をごまかしたとして刑事事件となったが、無罪となった事例が出た(東京地裁H26.5.21判タ№1412、296頁)、

 
 ちょっとややこしい条文だが所得税法12条はこんな風に定めている。
 
「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。」
 
 要するこれは「実質主義」と言って、法律上の名義にかかわりなく、実質的に収益に帰属する者に対して課税するという考え方だ。しかし、たとえば土地売買代金が法人名義で行われていれば、法的にはその代金は法人に帰属する。実質主義とは言っても、その判断の要素として法律上の契約関係は無視することはできない。むしろ、大きな比重を占める。
 
 講学的には「経済的帰属説」と「法律的帰属説」と論争されている。最高裁は法律的名義の帰属にかかわらず、経済的利益を終局的に受ける者が利益の享受者であるとしている(S.37.6.29)。しかし、どちらの立場に立っているかは判然としない。
 
もともと、所得税法が「実質主義」をとっているのだから、法的、経済的とはいっても似たような議論が展開することは避けられない。判例が法律的な経過も含めた諸要素を考慮するのも当然のことだ。「実質」を判断する以上、その場合には総合性が重視されるので、法的、経済的という議論の割り切りは不可能のようにも思える。
 
上記の東京地裁は「法的な意味での実質」という考え方を示して、原則として法的名義人に収益は帰属するとした。そのうえで、それに反する特別な事情がない以上は法的名義に従うとした。この判決は明確に法律的帰属説の立場に立っている。