2018.08.06 月曜日

豊橋発:起業家精神にあふれた研究者

 中小企業にあっても最近は大学などとの連携して成功を収めている例も少なくない。独自の先端技術をもって国際展開する企業はグローバルニッチトップ企業などと呼ばれているが、こうした中小企業でありながら高技術によって世界展開している企業などには、大学などの研究機関と共同することで、新技術を開発していった例も少なくない。


 ところで、大学というところは専門領域の先端情報や技術が集積しているところだ。科学的な成功を得るためには「さまざまな情報から知見を得るために、アイデアや能力をオープンにやり取りすることが不可欠だ。」。それに、大学はそもそも情報をオープンにして人類の進歩に貢献する使命を持っている機関だ。


 しかし、一方で、特定の先端情報や技術が事業に応用されるためには特定の事業者が独占することが求められる。当然、情報はクローズドあることが求められる。企業が大学と共同する場合、オープンであることが求められる大学側の要求とクローズドなものであることが求められる事業者側の要求とが常に葛藤を引き起こすことになる。


 研究者側が野心的で、起業家精神にあふれているとするならば、この葛藤に対する問題を解決しておく必要がある。なお、大学にいる限り、完全にクローズドなものとすることはあり得ない。


 こうした場合、研究者は自分の研究にかかわる情報をいかにコントロールするかが問われることになる。共同研究のパートナーである事業者側においてはなおさらこうした問題には無関心ではいられない。


 レディ・コタらはいくつかのルールを提案している。中小企業が共同研究による利益を守りたいというのであれば、参考にできる考え方のようには思う。


 ① 情報の全部の開示は行わない。公開範囲を主な結論や概要にとどめるべきだ。

 ② 可能ならば公開前に特許の仮出願をしておく。

 ③ 発明された商品や技術に目印をつけ、監視可能な状況を作り出しておく。たとえば、特定の物質を抽出する技術については、「他にない化学的な目印」をつけておく。

 ④ 製品に目印をつけることができない場合には発明したプロセスをライセンス供与という形で既存のツールやプラットフォームに組み込む。

 ⑤ アイディアは独創的であるが、市場にある技術の組み合わせでしかない場合には、商品化の過程でさらに独自要素を付け加える。


 具体的な話は論文を読んでいただくことにして、私の感想なのだが、大学は基本的にオープンな場所であるべきで、必要以上に起業的である必要はないように思う。もし、特許が必要だとすれば、それは人類進歩に役立つ情報が特定の企業に独占されないように、オープンにするために特許化しておくというときではないかと考えている。アカデミズムは人類への貢献こそが大きなインセンティブになるべきだというのが私の考えだ。