2019.01.07 月曜日

豊橋発:金額を決めないと権利はありません

 法律家の分野では初歩の初歩だが、一般の人には理解されていないことがある。その一つが、何事も確定していないと権利は発生しないということだ。

 たとえば、「○○を売ってやる」と言っても契約は成立しない。「いつ、いくらで、売ってやる。」と、こ、そ、あ、どを確定しないと法律的な権利や義務は成り立たない。だから、私たちが契約書を検討するときは、「特定」というのをまず重視する。その上で取引上の有利不利を考えていく。

 退職金でもそうだ。退職金について就業規則も無く、労働契約上の取り決めも無く、払ったり払わなかったりで慣例もなければ退職金という権利は発生しない。期末手当などのボーナスも同じだ(最判19.2.18)。

 最近、IPC報酬に関する裁判例が出た。

 これは外資系の企業に勤務していた者が、IPC報酬をもらっていたのだが、リーマンショック以降、急激なリストラが始まり解雇されたという事件だ。この人はIPC報酬で時には4000万円の年俸があったらしい。すごい。

 IPCというのは業務連動型報酬と言われるもので、外資系の金融業などに見られるらしい。歩合給みたいなものなのだが、もっと徹底している。IPC (independent parsonal consultant)ということで、個人請負に近い。

 米国では解雇は比較的簡単らしいが日本ではそうはいかない。労働契約法上「正当事由」がなければ解雇できない。この正当事由がきびしく審査されるのだ。特に整理解雇ではかなりきびしい。そのため、解雇は無効となった。解雇が無効である以上、給料は支払わなければならない。

 そこで、IPCに相当する部分、つまり歩合給を支払う必要があるかが争いなった。

 判決はきわめてシンプルだ。

 IPC報酬は会社が決めない限り発生しない。係争中、会社は何も決めていないのだから請求権は発生しないというのだ(最判H27.3.5判時2265号120頁)。

名古屋E&J法律事務所へのお問い合わせはこちら

  → http://www.green-justice.com/business/index.html