名古屋E&J法律事務所ブログ

2014.04.08 火曜日

敷金から差し引かれる範囲

 敷金は賃貸借契約の時に差し入れる金員で、契約に伴う借主の支払い義務を担保するためのものだ。家賃を支払わなければ敷金から差し引いたり、明け渡しの時に物が壊れていたりすれば、その修繕費用が差し引かれたりする。
 
 よく経験することだが、明渡の時に古くなった壁紙を取り替えたりして部屋の内装を新しくする。その費用を敷金から差し引くとして紛争になることがある。物を持っていれば古くなるのは当たり前で、それは貸そうと貸すまいと変わりない。そうした「通常損耗」まで借主に責任を負わせるべきではない(H17.12.16判タ1200号127頁)。貸主としては負担するべき「通常損耗」の範囲を契約書で明示する必要がある。不動産業者のみなさん気をつけてくださいね。
 
 敷金から一定金額を差し引くという契約はどうだろうか。
 個人と事業者との賃貸借契約は消費者契約法の規制対象となる。消費者契約法では民法の任意規定と異なる義務を負担させる場合に信義に反する行為は無効となる。敷引については個人である借主の権利を制限するために無効となるという考えがあり、いくつかの判決が無効としていた。
 
 確かに敷引きは意味がわからない。意味がわからないお金をとることは消費者契約法に反して無効というわけである。
 この点、近時、原則有効とする最高裁判決出された。判決は敷引きを通常損耗を填補する趣旨であると推定し、趣旨が必ずも不明ではないとした。また、引かれる金額が契約書に明示されているから借主にとって理解ができないということもないとした(H23.3.24、判タ1356号81頁)。
 
 もっとも、最高裁も無条件で有効としている訳ではなく、敷引きの金額が異常な高額であるなど、信義に反するような場合には無効となるとした。最高裁の事例では月額賃料の3.5倍程度までは許容しているので、その範囲までは有効ということになろう。