名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.03.22 水曜日

事業承継と跡取りの地位の保全

 事業承継の問題では中小企業でも会社の支配権を争う事態が生じる。遺言や生前贈与で株式を長男に手渡しても遺留分という権利が他の相続人に残る。
 
 遺留分というのは相続人固有の権利で,生前贈与や遺言による贈与の一部を取り戻す権利だ。たとえば,兄弟二人しか相続しない場合,弟には4分の1の権利が残る。弟が4分の1の権利を遺留分を行使し,全株相続した兄に対して4分の1の取り戻しを請求できる。
 
 会社の価値が低く,株価が安ければよいが,中には会社価値が1億円とか2億円とかする場合がある。本来なら承継時に株価を操作して安くして承継させるのが通常だが,社長が突然死した場合であるとか,そのうちそのうちで準備を怠った場合には遺留分などを巡って争いが生じる。
 
 こうした相続問題対策のために種類株式という方式が最近はよく使われる。会社法は様々なタイプの株式を利用できるようになっている。
 
 たとえば,同じ株式でも議決権無き株式というのがある。定款でAタイプ株式は議決権を与え,Bタイプ株式には議決権がない株式というのを作ることできる。国税庁の考えは基本的には株価には影響を与えないというものなので,遺留分行使に際しては議決権なき株式を利用することもある。
 
 あるいは,属人的株式という不思議な株式を利用することもある。これは閉鎖会社について認められた制度で,特定の株主についてのみ議決権を与えることができる制度だ。たとえば,「代表取締役たる株主のみに議決権を与える。」と定款で定めると議決権は代表取締役に集中する。もし,代表取締役が株を売ると,この株は普通の株にもどり議決権はなくなる。つまり,「人」に注目して株式の性質を変えてしまうというものだ。
 
 ともかく,支配権を万全にしたいのであれば,会社法上の工夫を行って跡取りの地位を守らなければならない。