名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.03.31 金曜日

アジア経済はどのように発展したか

 「アジアの経済発展と産業技術」(ナカニシヤ出版)という本を読み始めた。昨今のアジアの経済発展を産業技術の発展という視点から問題提起するものでとても興味深い。私自身もアジア,とりわけ中国,韓国のローカル企業の発展という点に強い関心があり,この論文集の内容は私の問題意識に沿うものだ。

 その中で,「技術論・学習論の視点によるアジアの発展とキャッチアップメカニズム」(児玉文雄,馬場俊幸)の論文をさきほど読み終わり,実におもしろかった。

 論文では,通常,「労働者に技術概念が定着し,各基盤要素技術・技能が蓄積するにはかなりの時間を要する」,しかし,アジア各国,とりわけ中国,韓国で部品の国産化が進展し,「完成品である消費財だけでなく,部品・部材などの中間財を担う産業・・・の進展はめざましい。」「そのメインプレーヤーは外資系企業だけでなく,地場企業も多いのである。」としている。その急激な変化のプロセス、要因は何かというのがこの論文の問題意識だ。

 日本の「ものづくり技術」において優位に立ち,国際競争の中で優位に立ってきたが,近似のアジアの経済情勢はそうではなくなりつつあるというのが筆者の問題意識にあるようにも見える。

 この論文ではこうした中国,韓国などで進展した技術料kは海外,とりわけ日本から移転していったと考えている。そのメカニズムについて教育のあり方,あるいは日本から海外への外注のあり方などの多角的に分析を加えている。

 その中で私が特に注目したいと思ったのは,まねできないとされてきた技術,たとえば金型製造技術が韓国,中国に移転していった点を分析している点だ。これらの「職人芸」のような体感的な技術が韓国や中国に急激に移転していったのはなぜかという点だ。

 この点でも筆者はさらにいくつかの角度からの分析を示した。その一つに「暗黙知の外部化」という考え方がある。暗黙知というのは客観化できない,説明できない知識で,経験的感とか,ニュアンスとかそういった知識だ。技術の面では徒弟的な関係の中で体験的に伝えられる知識となる。

 こうした知識は拡散は容易ではない。日本の強みは技術に磨きをつけてきたこともあるが,他にまねできない体験的な知識で頂点に立っていたという点もある。しかし、こうした知識ですら,今日のコンピュータによる解析とその解析結果を技術として利用するソフトウェア,ハードウェアによる開発によって客観化され,拡散可能となってきたのではないかというのである。

 かつては数個のセンサーしかなく,職人芸的な勘で製造しなければならないところを,多数のセンサーを統合することにより熟練を要しなくなった分野はたくさんある。3Dキャド,コンピュータシュミレーションの発達など、情報技術の発展によって暗黙知とされているものが外部化されようになったとういのだ。

 こうした外部化は当然のことながら拡散の容易化につながる。もともと誰でもできるようにと開発された技術なのだから当たり前と言えば当たり前だ。アジア,とりわけ中国や韓国は外資導入により資本を蓄積する過程で、こうした外部化された経験値的知識を取り入れ、急速に経済を発展させてきた。高度な機械,高度な技術を実現するコンピュータ,ソフトウェアを導入し,今日,先進国企業に納入できるだけの品質の高い部品を製作できるようになってきたのではないか。というのだ。