名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.06 木曜日

アジアの発展と裾野作業の貢献(馬場俊幸)

 アジアの経済発展と産業技術(ナカニシヤ出版)を少しずつ読んでいる。
 その中の論文「アジアの発展と裾野産業の貢献」(馬場俊幸)はとてもおもしろい。中小企業法務を専門とする私には重要な論文だ。
 
 裾野産業(サポーティングインダストリー,supporting industry)といのは「工業製品の製造に際し,多種多様の部品・部材・素材・機械・工具・資材などを供給する産業群の総称である。」。大企業に対して多くの裾野産業があって工業は成り立っている。裾野産業の担い手は中小企業だ。この裾野産業が一国の経済を支えていることは明らかだ。中国でhあ自動車を製造しているが、主要な部品は日本や韓国に頼っている。日本の裾野産業が優秀で競争力があることで中間財の輸出も伸び、貿易収支の黒字にも貢献することになる。
 
 この論文のおもしろいところは,こうした裾野産業がアジア市場の展開にとってどのような役割を果たしているかを分析しているところだ。
 
 中国,韓国,ASEAN諸国の経済発展は著しいが,基本的には外資の導入によって経済発展を果たしてきた。
 外資導入によって自動車や電化製品など消費財を国内で生産し輸出することになる。しかし,「部品・部材・素材・機械・工具・資材」といった中間財は国内で創ることができないため,依然輸入に頼らざる得ない。中国では自動車を創ることができるが,そのための中間財は輸入に頼らざる得ないということになる。これは中国のローカル企業が未発達であるため,こうした高品質な中間財を生産することができないためだ。
 
 論文ではこうした中国,韓国,ASEANなどの国々で中間財の輸出入,国内生産の動きを分析で,アジア市場での生産体制,とりわけ産業間の関連(産業リンケージ)がどのように推移しているかを分析する。それによると,各国は中間財の供給を日本に依存し,この点については貿易赤字,日本にとっての黒字が続いている。つまり,外資導入によって最終的な消費財の生産はできるようになり,さらに輸出していていも,も中間財は日本に依存している構造が明らかにされている。
 
 もっとも,時代の変遷があり,中国,韓国では徐々に中間財の輸入が減っており,特に韓国では急激に日本への依存度が減少している。これは中国,韓国とも国内の裾野産業が近年充実し始めたことを意味する。実際,私の実感としても中国のローカル企業が日本の大企業に商品を納入するようになっている。それは中国中小企業がかなり高度に発展していることを意味するだろう。
 
 さらに興味深い点は著者がこの問題を国際的な産業リンケージの視点からも展開している点だ。
 
 著者は言う。
「この1990年代以降の変化を一言で言うと,アジア新興諸国裾野産業の国際競争力向上と,裾野産業分野での日本一極依存集中からアジア域内相互依存への転換である。」
 
 この「相互依存」の状況が進む中で日本の中小企業がアジアの様々な企業との相互連携を図っていく必要がある。みなさんはその戦略を作り上げているだろうか。
 
 馬場俊之先生の論文はこちら