名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.12 水曜日

経済発展における金型の役割

馬場俊幸先生(法政大学)は経済発展における金型の役割に注目する。

 
 金型は金属,樹脂,ゴム,ガラス,炭素素材の成形品の大量生産を可能にする。また,成形品よりも一桁高い精度が要求されることや,複雑な形状を実現する必要があることから高い技術力が必要となる。そのため,金型産業のあり方がその国の生産性,製品品質,製品価格,製品開発に深く関わることになる。
 
 金型の生産性について馬場先生は金属プレス用金型とプラスチック成形金型について検討している。電子部品を作るのに高品質金型を用いて一度に成型する場合,8台のダンデムプレス金型を用いる場合,一人で加工する場合を想定し,部品一個あたりの加工時間を比較した,すると,1:22:429という結果を出している。さらに高精度金型を用いた方が品質も高い。
 
 プラスチック成形金型についても生産性を検討し,金属金型の場合とプラスチック金型の生産性を比較する。プラスチック金型は非常な高度な技術を要するが,タクトタイムは1800秒から15秒に短縮される。プラスチック金型の方が軽い上に,投資額も少なくて済む。工学の言葉が出てきてわかりにくいが,飛躍的に生産性が向上することを数字をもって明らかにしている。
 
 金型の貢献は生産性ばかりではない。製品のイノベーションにも大いに貢献する。先生は九州の金属メーカーの例をだす。ハイブリッド車の中核部品を金型で大量生産することを可能にして,ハイブリッド車の品質向上,価格低下に貢献している。金型が開発されることで,それまでできなかった製品を世の中に出せるこようになる。
 
 日本の産業は高技術を売りに経済的有意を保ってきた。その一つが金型である。しかし,その金型製造についても韓国,中国が猛烈な勢いで追いつこうとしている。 韓国の金型産業はある面では日本に追いついている部分もあると思う。実際,私の知り合いの企業でも金型を韓国から輸入する例は少なくない。
 
 金型の製造の元となる高技術は従来職人芸的な「技」として伝えられてきた。しかし,コンピュータ制御の工作機械が発達することで,そうした「技」の部分も機械で制御できるようになった。これは何を意味するかというと,高い教育を要する技術が,誰でもできる技術に変化するということになる。つまり,「技」は人から人へ伝えられるのではなく,工作機械から人に伝わっていくことになる。韓国や中国は高度な工作機械を輸入し,使いこなせば「技」は身につくことになる。
 
 金型製作の技術もこうしてライバル国に伝わっていったし,今後も伝わっていくだろう。日本の産業,特に中小企業は「技」だけでは勝負できなくなる。それはイノベーション能力であったり,市場,とりわけアジア市場に対するマネジメント能力によって競争上の有意を保っていく必要があるだろう。