名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.13 木曜日

公海運送中の発火事故

 公海運行中に商品が発火した場合,荷送人が責任を持つべきか,それとも荷送人が責任を持つかが問題になる。こうした特殊な商品の輸送については,輸送について貨物の特性に詳しい荷送人にも一定の責任があると思われる。
 
 たとえば東京地裁の事例は自己発熱物質の輸送をしている最中に発火してしまった事例である。
 
 荷送人は貨物の内容について,英国版MSDS(化学物質の性状,取扱に関する情報が記載された安全シート)が提供されていた。
 
 東京地裁はこのMSDSの内容を検討した上,本件物質が国際海上危険物規程にいうところの,自己反応性物質及び自己発熱物質に分類されなければならないとした。また,その運送方法については船舶安全法,危険物の運送及び貯蔵に関する技術基準を定める国土交通省令を指摘した。その上で,本件は安全な保管状況になかったとしたのである。
 
 つまり,荷送人は貨物について与えられた情報を読み取って,令所での保存,高温を避ける措置などを行う義務があったとしたのである。本件では荷送人は化学物質の専門業者であることも,荷送人に一定の危険を読み取る義務を課したものと言える。
 
 結果,本件では荷送人の責任を否定した。MSDSの提供をもって,化学物質の表示,警告としては十分で,荷送人はそれをくみ取って対応策を講じておかなければならないとしたのである(東京地裁H25.5.27判時2211号58頁)
 
 輸送中の事故についての問題については上記の判例の他にいくつか存在する。本件は上記のように,特殊物質について荷送人が必要な情報を全部提供したとしたのである。特殊物質についてはたとえば,固定方法が特殊であったり,運送中の保管が特別であったりする場合には荷送人が責任をもって固定したり,保管方法について十分な情報を提供する必要があろう。