名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.18 火曜日

事業の休止と税金のゆくえ

 経営が行き詰まり,事実上倒産状態になることがある。こういう企業は消費税とか,源泉徴収分とか,社会保険料とか,企業に利益があっても無くても徴収される税金が残ることが多い。いったい,この税金はどうなってしまうのだろうか。
 
 租税や社会保険料などは企業に利益があろうがなかろうが発生してしまうので,経営状態の悪い企業については,税金や社会保険料が最後の一撃になることが少なくない。確かに支払わないのが悪いのだろうが,国税局や社保庁の情け容赦のない態度はなんだかベニスの商人に出てくるシャイロックようだ。
 
 法律の原則から言えば,税金などは会社の債務だ。従って,会社の未納税金に対して社長個人が責任を負うことはない。もちろん,会社以外の第三者が責任を負うこともない。租税債務は会社の消滅とともに消えていくというのが法律上の大原則だ。
 
 しかし,いくつか例外がある。
 
 第二次納税義務というがそれだ。
 倒産寸前の会社が第三者に事業や財産を譲った場合,税務署は当該会社からは税金をとることはできない。ない袖は振れない。いくら国家権力でも強制労働という制度はない。財産がなければそれでおしまいだ。
 
 しかし,譲り受けた第三者に生じた租税債権を追及できる。税務署が第二次納税義務を決めた場合,譲り受け人に納付通知が送られ,さらに財産が差し押さえられていく。これが第二次納税義務だ。
 

 第二次納税義務には11種類ほどあるが,倒産企業との関係では次の2つが要検討だ。38条は事業の譲渡にかかわるもの、39条は財産の譲渡にかかわるものという相違がある。
 
■ 「事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務」(徴収法38条)
 これは同族会社や親族がかかわる会社に事業を譲渡した場合だ。特殊関係というのは納税者と「生計を一にする」配偶者その他の親族で、その納税者の経営する事業から所得を受けている者である(徴収法37条1号)。
 
■ 「無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務」(徴収法39条)
 たとえば,倒産前に著しい低額で土地を譲り渡したりすると,その限りで譲受人には納税義務を負うことになる。
 
 これらは「法人格否認の法理」や詐害行為取消権を徴税版に弾き直したものである。倒産,廃業を覚悟し,次の会社でがんばろうという時には注意を要する制度だ。