名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.25 火曜日

従業員の横領にどのように対処するか

 預金などの引き出しを任せていて,従業員がお金を不正に引き出すということがある。あるいは営業に回っていてお金を取り扱うような場合には会社のお金を抜き取ることだってある。こういう場合,少額ずつやる場合が多いので中々分からない。分かったとしても全容をつかむのは容易ではない。
 
 第1に必要なことは決定的な部分をまずつかむことだ。
 たとえば,2から3年にかけて少しずつ横領していたような場合,毎月5万円とか10万円とか抜き出しているような例から毎月100万円,200万円と抜き出す例とかがある。しかしたくさんのお金の移動のなかから不正だけ抜き出すことは容易ではない。それでもまずは決定的な部分,たとえば最後の数回といった物証や,人々の記憶がきちんとしている例を取り上げることが必要だ。
 
 第2に必要なことは決定的な証拠を示して自白を取りつける。
 逃げられない証拠をつかんでおいて,不正従業員に示し,謝罪させる。その上で他の部分について説明させていくことが大切だ。この時,まず謝罪文をかかせ,不正額の全額について分かっている範囲だけでも記載させる必要がある。
 
「このたびは会社にご迷惑をおかけして申し訳ありません。少なくとも●●円の不正を働きました。責任を対処します。」
 
 第3に不正の全容を解明していく。
 刑事告訴をしないかわりに,全容を明らかにするよう求めていくことになる。
 横領行為はけっこう重くて,数百万円でも実刑になる可能性がある。刑事事件で処分されても会社は損失は回復されない。会社の信用にもかかわる。刑事告訴は取引材料として認識して不正社員の追及をしていく。
 
 第4に短期決戦,深い追いをしないことが大切だ。
 社員の横領はそれを許した管理者の責任でもある。何でもかでも追及しようとして社員を逃がしてしまうこともある。ある程度はあきらめなければならない。そして,適当なところで社員とは覚え書きをかわす必要がある。
 
「不正を働いたことをお詫びします。このたびの横領額は少なくとも1000万円に及ぶことが分かりました。責任をもって返済いたします。返済方法については協議させていただきます。」
 
 なお,こんな例もあるので注意を要する。
 従業員が銀行から毎月少しずつ横領行為をしたとして,会社が社員に4200万円の賠償請求した事例だ。
 会社側は横領を立証しきれず,請求は棄却された。それどころか,横領の事実はなく,事実のないことが容易に分かるのに裁判したとして,逆に不当訴訟を理由に250万円の支払いを命じられてしまった(広島高裁H25.12.24判時2214号)。