名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.04.27 木曜日

食材に異臭,商品回収と製造物責任

 中国から塩蔵マッシュルームを輸入し,加工して販売している業者がマッシュルームに異臭があったとして製造物責任を問われた事例がある。食品を中国から輸入している事業者は要注意だ。「欠陥」と認定されるだけで製造物責任が課せられる。業者側の過失の有無は原則問わない。
 
 被告は中国福建省裕泰公司より,塩蔵マッシュルームを輸入して,天狗缶詰に販売した。天狗缶詰ではマッシュルームをスライス製品に加工して,はごろもフーズに納入した。天狗缶詰とはごろもフーズとはOEM契約であった。
 
 平成19年10月ころ,このスライス製品に対して消費者から異臭の苦情が寄せられたところ,天狗缶詰において調査し,トリクロロフェノール類が一定量(人体に対する有害性はない量)が認められた。天狗缶詰,はごろもフーズは商品を回収する措置をとった。
 
 この事件では天狗缶詰が「生産物品質保険契約」,「事業総合賠償責任保険契約」を締結していたため,損害は保険会社が支払った。その上で,保険会社は輸入業者である被告に債務不履行(異臭ある食材を天狗缶詰に納入した点の債務不履行),製造物責任を追求した。東京地裁はこの請求を債務不履行責任を否定し,製造物責任に基づいて請求を認容している(H25.12.5判時2215,103頁)。
 
 本件ではフェノール類が混入していた事例ではない。スライス生成過程での塩素とフェノール類が反応し,異臭原因物質が発生したと認定されている。つまり,輸入時点では異臭事故は無かったということになる。また,中国での栽培そのものには問題は無かった。
 
 こうした事情の下では被告は異臭事故を防ぎようがない。
 裁判所はこの点を考慮して債務不履行上の帰責事由,つまり,被告の義務違反を否定した。
 
 しかし,異臭物質の原因となるような物質が含んだマッシュルームは「欠陥商品」であると認定して被告の責任を認めたのである。製造物責任は過失とか,注意義務違反とかいった何らかの売主側の事情を原則考量しない。
 
 本件では被告側としてはPL保険などに入るほかは,手の打ちようがない事例だ。
 
 ただし,スライス製品製造過程での塩素とフェノール類が反応したということだが,そういうものまでそもそも「欠陥」と認定できるかどうかと言う点や,そもそも塩蔵マッシュルームが原因となったということができるかという点など,判決には議論するべき点が多い。
 
 なお,輸出側,つまり中国の企業に責任問題は一応問題になり得る。中国側の業者とも製造物責任についてきちんとした契約を締結しておくことが必要であることは言うまでも無い。