名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.05.11 木曜日

材料有償支給の功罪

 製造業の分野では材料有償支給というのがしばしば行われる。しかし,有償支給によって在庫リスクを下請けに転嫁したり,有償支給を悪用して下請けから利益を吸い取る仕組みを作るような場合には下請法違反の事例として公正取引委員会の介入を招くことになる。
 
  親事業者が材料有償支給する場合いくつか動機がある。
 
① 材料を指定することで品質を維持できる。
② 有償支給とすることで,下請業者も材料の節約をすることになる。
③ 不良品など,やり直しする場合の不利益を下請けに転嫁する。
④ 在庫のリスクを下請けに転嫁する。
⑤ 下請けが多くある場合には,材料を大量に仕入れることができるので,材料代のコストを下げることができる。
 
 材料有償支給の実態は材料を抱え込むことのリスク,つまり②,③,④などのリスクを下請けに転嫁するというのが主要な動機となっているのではないかと思われる。材料支給の利ざやをもうけて,実質的に下請代金の値引きを求めている例も多いような気がする。
 
 有償支給をめぐっては下請けいじめにつながるため,下請代金支払遅延等防止法(下請法)第4条2項1号でも規制を加えている。
 
 4条2項1号の規制は,有償支給された材料の代金支払時期を,製品代金よりも先に支払わせることを禁じている。まず,材料代を支払わせて,その後,製品の代金を支払うことを原則禁止している。
 
 公正取引委員会によると,平成23年12月21日,株式会社サンエスは4条,2項,1号違反を理由に是正勧告され,サンエス社は過剰に仕入れさせた包装材料代金を下請けに支払うに至っている。公表された勧告の内容は次の通りである。
 
(ア) サンエスは,菓子の製造を下請事業者に委託するに当たり,その菓子の製造に必要な包装材料を自社から購入させた場合に,当該包装材料の対価について,下請事業者に責任がないのに,当該包装材料を使用して製造した菓子に係る下請代金の支払を行う前に,下請事業者に支払うべき下請代金の額から控除し,又は支払わせることにより,当該下請事業者の利益を不当に害していた。 
 
 (イ) サンエスは,下請事業者に対し,前記(ア)により支払うべき下請代金の額から控除し,又は支払わせていた包装材料の対価のうち,平成22年3月から平成23年5月までの間に,菓子の製造中止等により不要となった包装材料の対価に相当する額の一部を負担させていた(負担させた金額は,下請事業者11名に対し,総額249万529円である。)。