名古屋E&J法律事務所ブログ

2017.11.06 月曜日

中小企業が海外に市場を求める

1. 成熟した市場における「攻めの経営」のポイント
 特定の商品が浸透し,一定伸び悩んでいるとみた場合に市場を海外に求めていくというのはある種自然な流れだ。
 
 マイケル・ポーターは成熟期にある市場では,コスト低減の新しいマネジメントや既存シェアを大切にするといった「守りの経営」の重要性を強調しているように見える。一方で,シェアの安定と拡大のためにいくつか提案している。私が注目しているのは次の2つだ。
 
 ① 顧客の選択,あるいは集中戦略の重視
 ② 国際市場への参入
 
2. 小ロット戦略,たとえば宝石業界の例
 たとえば宝石業界は市場範囲の限界が既に明確になっている。事業者は限られた範囲のシェアを取り合うという激しい競争関係にあると言える。2014年ジュエリーマキの三貴が倒産したのも業界の競争の激しさを物語っているのではないだろうか。
 
 もちろん宝石といっても様々な市場があるようで,財産,資産として何百万円,何千万円もの宝石を持つ顧客もあるだろう。一方で一生に一回,結婚にあたってプレゼントするというようないわば思い出としての財産を重視する顧客もいるだろう。これは,エンゲージリングや婚約指輪といった3万円から50万円の範囲の顧客層だ。
 
 そんな中,ある業者はオーダーメードの宝石を通常価格で提供するという戦略を打ち出している。世界でただ一つの商品という打ち出しで事業を実施している。つまり,顧客が指輪を持つ動機にそったストーリーを生み出し,その「思い」を宝石の中にデザインしていく。
 
 二人の思い出を象徴するストーリーを作り上げ,それを象徴するデザインを提案し,指輪という形にしていくという商品を売っている。一般市民が宝石などを購入する主要な動機をもっともピンポイントで狙った事業戦略となっている。
 
 ポーターは成熟した業界での展開方法に上記の①,②を提案しているが,上記の宝石業者は顧客をはっきり選択し,小ロット,特殊商品品種を売り出す戦略を打ち出している。
 
 利益との関係ではこうしたオーダーメード,小ロット戦略の方がコスト戦略の点からも有利と言えるかも知れない。つまり,コストは単に節約との関係で見るのではなく,利益を生み出すことの対比で必要なコストが小さいかどうか,大きな利益を生み出す結果,小さくなっているかどうかと言う点も重要だからだ。
 
3. 海外戦略への展開
 ところで,宝石業界は早い時期から商品は国内に浸透し,ある種の「飽和感」つまり,一定範囲の市場を多数の企業が奪い合っている感覚が強い。今後人口は減少していくから競争はさらに激化の一途だろう。ティファニーなどの海外企業も進出している。
 
 マイケルポーターは成熟した企業が海外に市場を求めることは有益だという。
 「国際市場では買い手が知識も乏しく交渉力も弱く,競争相手が少ないなど,業界構造がはるかに有利なこともある」という。海外のジュエリーブランドが日本や中国の市場をめざして次から次へと参入していくルのもポーターの考えに沿っていると言える。
 
 たとえば宝石業界の業者が仮に国内市場に「飽和感」を持っているとしたら,海外に目を向けて事業展開を図ることも重要な選択肢であるだろう。中国では改革開放後の高度経済成長が終焉を迎えつつある。一方で国民の生活水準は徐々に向上しつつある。
 
 とりわけ,上海などを中心とした中高消費者層,「白襟層」の台頭が著しい。かれらは,徐々に生活に「質」を求めつつある。西洋式の生活にも憧れ,個性や創造性を発揮したいと考えている。つまり,自分たちのライフスタイルを作りたいと思っているのだ。自分の生活に「ストーリー」を持ち,それを象徴する宝石装飾品を持ちたいと思うようになっているかもしれない。