名古屋E&J法律事務所ブログ

2018.06.11 月曜日

ポスト円滑化法、劣後債権、資本性ローン

 根雪のようにたまった債権のある会社、短期融資が事実上長期化したり、長期融資が全く減らない会社では一度劣後債権というものを検討してはどうだろうか。

 昨日は日本政策金融公庫のスタッフから政府系金融機関として運営の姿勢、実態などについて聞くことができた。興味深かったのは「挑戦支援資本強化特例制度」(資本性ローン)だ。この融資は2億円までの範囲で決められる。
 
【劣後債権とは・・・・】
 
 これの制度による融資は劣後債権に分類される。劣後債権というのは通常債権に劣後するという意味だ。破産などによって財産が整理された場合、租税や労働債権などは他の債権者に先んじて優先的に配当を受ける。劣後債権はその逆で、一般債権者が配当を受けて、財産が残れば配当を受けるという性質の債権だ。さらに残れば、オーナーである株主に配当される。
 
 つまり
 精算 → 優先債権 → 一般債権 → 劣後債権 → 株主
 となる。
 
 ここで、注目してもらいたいのは、いろいろ配当して、残った部分に劣後債権者、株主の順序で配当される。このような債権は実態としては株主と変わらない。株主は利益から配当を受けるが、劣後債権は金利という形で定額の支払いを受ける。株主は議決権はあるが劣後債権者はない。
 
 株と言っても最近は議決権のないものもあるから劣後債権と株式とは限りなく近づいている。特に、劣後債権の返済期が10年とか15年とか長期になっているので株式との距離はさらに近づく。
 
【劣後債権の利点は・・・・】
 この劣後ローンの特徴から、株式と同じと考え、金融検査上は自己資本とみなすことができる。
 つまり、5000万円という借金があった場合、通常債務だと借金の分だけ自己資本率が下がる。会計上のバランスが悪く、金融上は低い評価を受ける。格付けも悪い。
 これが劣後債権に変更されると劣後債権は自己資本とみなされるから、自己資本率が一気に改善する。金融機関の格付けは上昇する。金利や保証料は安くなり、追加融資も可能となる。
 
 劣後ローンは資本的な取引、つまり株式投資と同じような意味があるから、返済期間が長期でないと意味がない。また、担保をとったり、保証人をとったりしても意味はなくなる。
 
 日本政策金融公庫の商品では次のような条件となっている。
 ① 融資期間:15年、10年(期限一括償還)
 ② 無担保、無保証人
 ③ 金利は0.40%から9.95%
 
【劣後債権の選択基準は何か・・・・】
 
 元金の長期据え置き、無担保、無保証、自己資本化(金融検査上)と言った劣後債権の特徴だけから言ったらいいことづくめだが、実際には金利高くなる。私自身の関係では顧客にこのローンを利用した会社はいないが、おそらく次の要素を考慮して選択することになるのだろう。
 
 ① 金利との比較
   劣後ローンによって支払われる金利を検討する。
   その上で、自己資本率が高まる結果得られる利益、金利、保証料の削減の程度を検討する。
 
 ② 将来の格付け低下の危険
   円滑化法が近い将来なくなる可能性がある。その場合、条件変更した融資はそのまま不良債権となってしまう。会社の格付けは当然落ち、金利が上昇し、新たな融資を受けることはできなくなる可能性がある。さらに、元金の返還も求められる可能性がある。このような事態を想定して、劣後ローンを利用するという方法もあるように思う。
 
 ③ 追加融資の必要
   長期化する金融不況下、新たな事業を展開する企業も少なくないだろう。この場合、チキンレースのようなところがある。つまり、不況によって本業からの負担が会社をつぶすか、新規事業の伸びが会社を救うかのレースを続けている企業も多いように思う。チキンレースに勝つためには追加融資も必要だ。条件変更した企業には銀行は貸さないのが一般だ。その場合、根雪のような長期債務を劣後債権化することは価値がある。