名古屋E&J法律事務所ブログ

2018.12.24 月曜日

企業間の水平戦略

 マイケル/ポーターは事業単位(business unit )の相互関係(corporate strategy)について論じている。企業が多角経営に乗り出す場合の有効性とその実現方法がテーマだ。多角経営することで多角的な分野から利益をあげることができたり、事業上のリスクが分散されるすることは明らかだ。

 しかし、マイケル/ポーターの問題意識は相互作用から生み出される「競争上の優位」の具体的なメカニズムと実践上の課題にある。
 
  異なる事業単位が相互関係を築くことによりいわゆるシナジー効果を生み出すことがあるが、シナジー効果の真実がポーターの問題意識だ。シナジー効果は魔法の化学反応ではなく、かなり緻密な戦略に基づいて実施される地道で着実な行動の成果である。

 具体的には以前の私の記事を参照されたい。

【相互作用というのはどういうことか】

 中小企業の場合、経営資源が乏しいので多角経営とは言っても限界がある。むしろ、企業同士が相互関係を形成することによって、全体として利益を上げていくというのが普通ではないだろうか。このような中小企業の相互関係、すなわち企業連携を考える上で、ポーターの水平戦略は大いに参考になる。

 中小企業同士が企業連携して新しい「競争上の優位」つまり戦略上の価値を生み出そうという場合、相互関係の分析が必要となる。ポーターは「有形」、「無形」、「競争相手」と分析の視点を立てる。

 「有形」というのは製造、物流、マーケッティング、サービスなど経営資源の共同化などを指している。たとえば、物流を共同化させればコストや調達範囲が広くなるから相互関係によるメリットが生まれるという具合だ。異なる事業単位の顧客を相互に融通しマーケットを広げるということがあるかもしれない。

 「無形」というのはノウハウの移転を意味する。たとえば、ソニーの家電製品を美しくコンパクトする技術は共同課することにより新しい商品開発に利用できたりする。これは同一企業内の異なる事業単位ということであれば、ノウハウが外部に漏れないので比較的やりやすいかもしれないが、中小企業という独立した経営単位の場合ノウハウの流出を招くので単純ではない。

 競争相手の相互作用というは、すでに競争相手が共同化している場合にそれを参考にしたり、それとは異なった事業単位の組み合わせ、共同のやり方を考えて対抗していこうというものだ。

【水平戦略の重要性】

 こうした相互作用の一般的分析だけでは相互作用は生まれない。重要なのは異なる事業単位、この場合であれば中小企業同士の相互作用、企業連携はどのようにマネジメントされれば利益、「競争上の優位」を生み出していくかが検討されなければならない。ポーターはこれを水平戦略(horizontal strategy)と呼んでいる。

 ポーターは水平戦略について「ボトムアップで生まれる水平戦略などありえない」という。つまり、事業ユニット間の相互関係を作り上げて新たな価値を生み出す戦略を作り上げるセンターが必要だというのである。中小企業の場合、企業群のリーダー企業がその役割を果たす。

 あるいは、企業が寄り集まるプラットフォームがあって、コンサルタントや企業横断的な専門家(たとえば弁護士や会計士のような)がプラットフォームの基本戦略を作り上げ、横断的なマネジメントを行うことになるのだろう。当事務所の企業戦略もプラットフォームのマネジメントに習熟しようというところある。

 ポーターは水平戦略を有効に実現する上で、相互関係という組織のあり方は戦略とは切っても切れない関係にあるという。「組織は戦略に従う」というドラッカーがよく引用する有名な言葉があるがその通りだ。

【水平戦略はどのように作られるべきか】

 ところで、中小企業において水平戦略はどのように作り上げられるべきなのだろうか。

 なんでもかんでも企業が集まればよいというものではない。相互関係によって価値を生み出す企業同士が結合しなければ意味がない。ポーターは相互関係を作る方法を提案している。

 しかし、企業が集まらなければ選択される機会も存在しない。私は中小企業家同友会という企業団体に所属しているが、異業種が多く集まり、互いに経営の勉強をしている。中には相互の連携が生み出され利益を上げている。

 ランダムな企業集団の中から、相互関係を作ることができる企業を選び出し、あるいは自主的につながり、企業連携が効果的に発揮されていくということが必要だろう。そのためのマネジメントノウハウの開発が必要だし、当事務所の目指すべき方向ということになる。おそらく、これは研究者と連携しないと無理かもしれない。