名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.04.02 火曜日

銀行債務から逃げる方法はあるか?

 借金は返すもの、返せずつぶれても事業者の自己責任だと言ってしまえばそれまでだ。しかし、資本主義社会では常に再起があってよい。

 こうした事業再生の課題で一般的に考えられているのが会社分割と事業譲渡だ。これらはいくつか条件があるが多くが成功している。なお、会社分割は会社法改正があって、簡単には使えなくなっている。

 この点について最近興味深い判決が出された。
 倒産企業が銀行からの借金だけ残して、事業を全部新会社(新設分割)に移したという事例だ。旧会社はその後破産している。

 銀行は会社を分割して借金から逃げる行為は許されないとして、法人格否認の法理、詐害行為取消権という手法を用いて新会社に債務を追及した。この2つの手法は専門性が高いので説明できないが、ともかく会社を残して逃げていく者を追及できる制度ということを理解すればよいかと思う。

 ともかく、裁判所はいずれの根拠も否定し、銀行の請求を認めなかった(京都地裁H.27.3.26判時2270号118頁)。注目すべき点は、債務を残して新会社を設立した点に一定を理解を示している点だ。

 会社の分割について「事業の再生を図るためにやむなく実施されたものというべきであり、本件全証拠に照らしても法人格を濫用する目的までは認められない」とした。

 しかし、だからといって借金だけ残して、新事業に取り組むことは許されないとし、詐害行為性は認めた。もっとも、この場合、旧会社が破産していて、新会社に移った財産を価格評価して、その金額を取り戻していた。つまり、すでに取り戻されているから、銀行は二重には取り戻すことはできないと判断した。

 ちょっと、このあたりは法律家でないと分からないかもしれないが、判決はとても重要なことを示している。この場合、管財人は新会社の株式を計算し直し、その株価を長男が支払わせている。

 事業の対価が適切に評価されて支払われていること、手続きに透明性が確保されていること、事業体かが債権者に平等に分配されていることが事業再生の道筋を作る上で重要ということになる。

 ただ、現実にはこんなきれいには行かない。

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