名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.02.19 金曜日

医療法人からの退社

 医療法人から退社した場合にどのように返還金が支払われるだろうか。

(尚、平成19年4月の医療法の改正に伴い医療法の設立は持ち分の定のない医療法人又は財団医療法人のみになりました。これは改正前に設立された法人の話です。)
 医療法人の定款には「退社した社員は、その出資額に応じて返還を請求することができる。」と定めていることが多い。
 
 この場合、設立時の出資金を返還すれば済むだろうか。それとも、医療法人の清算価値を基準に持ち分の割合分を返還するべきだろうか。
 最高裁は清算価値を基準に持ち分の償還を認めている(最一小H22.4.8、判タ1327号75頁)。
 
 例えば、持ち分1割の社員が出資金が1000万円程度で医療法人を始めたところ、現在価値が10億円になっていた場合に返還するべき範囲は、100万円だろうか、それとも1億円だろうか。
 
 普通の法人であれば、会社の清算価値などを基準に持ち分の割合に応じて返還を受ける。株式会社であれば、株式の売却価格が脱退に伴う返還価格ということになる。しかし医療法人は単純ではない。医療法54条は収益や評価益と言った利益を社員に分配することを禁止いるからだ。途中脱退に伴って清算価値全部を払い戻してしまったら、剰余金、積立金が返還され、実質的に利益が分配されることになるという危惧があるからだ。
 
 実際、そういう裁判例もある(東京高裁H.20.7.31)。しかし、医療法人とは言っても法人は法人であり、他の団体と変わることはない。医療法54条は利益の分配を禁じているが、持ち分を出資に応じて分けること自体は禁じていない。
 
 遺産分割時など、実務上、脱退に伴っては清算価値を計算して持ち分の割合に応じて返還している。要するに、脱退に際していかなる金額を社員に返還するかは、各病院の自治に委ねられていると言って良い。定款において、清算価値を持ち分に応じて返還するとあればそのようにすることになる。最高裁もこの道理を認めた