名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.02.29 月曜日

銀行情報の取り扱い

銀行は高い守秘義務を負っていて、顧客の情報を他に流すことは絶対に許されない。

 
 しかし、特定の会社に対して銀行が支援するかどうかの判断を他に流すことが許される場合がある。銀行支援の有無が会社の存続に関わることがあるから、この情報はきわめて価値ある情報となる。
 
 株式会社クボタは農業機械製造販売で有名な企業だが、ある会社と取引を継続するかどうか悩んでいた。そこで、その会社のメインバンクに本当に支援するつもりがあるかどうかを調査した。クボタの言い分によると、銀行は経営改善するまで全面的に支援する、銀行はこの会社に取締役を派遣しており、そうした会社を潰したことはないなどと説明を受けたとされた。
 
 クボタは銀行の言動を信用して、取引を継続した結果、2億円を超える債権が回収不能となったという。クボタから仕入れた機械の転売益は銀行の債務支払いのために宛てられたというのがクボタの言い分である。
 
 確かに、クボタが銀行より説明を受けたのが平成16年3月25日であり、この会社が倒産して再生手続きを申立てたのが平成16年12月20日ということだから、その間わずか9ヶ月ほどしかない。民事再生の準備にはけっこう時間がかかる。本格的な民事再生を行うためには事前にメインバンクとも打ち合わせることもある。そう考えると、銀行が説明した当時、すでに銀行としては撤退を考えていたというクボタの主張もよく分かる。
 
 取り込み詐欺というのは、機械を購入しておいて転売してそのまま代金を払わず逃げる方式をいうのであるが、よく似ている。確かに、クボタが騙されたと思ったのも無理はない。まして、2億円という大きなお金だ。
 
 しかし、東京地裁は当時メインバンクには支援の意図はあったと認定し、クボタの主張を退けた(H22.5.25、判時2086号65頁)。そもそも、メインバンクにはクボタに対し、「財務状況について正確な情報を提供すべき注意義務又は説明義務を負うものではない。」としている。これは誠にごもっともな判断である。
 
 この裁判の教訓は、銀行も営利企業なので、自己の利益のための駆け引きを考えて動いている、けっして油断してはいけない、というものになりますね。