名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.03.09 水曜日

正常なる運転資金

融資問題の勉強が続いている。

 正常なる運転資金という言葉がある。  
 金融検査マニュアルによると、「正常なる運転資金」に対する融資は返済確実な債権として、「分類対象外債権」とされている。この返済確実性がどのくらい確実とされているかというと、分類対象外債権にはこのほか、「預金等及び国債等の信用度の高い有価証券等の優良担保が付されている場合」が含まれており、きわめて高い信頼度だと言って良い。
 
 「正常なる運転資金」というのは、文字通り運転資金だ。掛売りや手形による支払いがあった場合には、入金は確実だがすぐにお金が入ってくる訳ではない場合がある。その時に当面の運転資金が必要になる。
 
運転資金は次のように表現されている。  売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形
 
 銀行にとって、債権がどこに分類されるかについては、貸倒引当金の金額にかかわるためセンシィティブな問題となる。正常なる運転資金のための借入は分類対象外債権とされているため、引当金の積立はいらない。銀行にとっては貸しやすい商品ということになるか。もっとも、「正常」かどうか厳しい調査が入っているかもしれない。
 
 この「正常なる運転資金」は返済確実であるため、銀行ではこの範囲内であれば金利のみの支払いで融資を実行してくれる。当座貸越しはその典型である。当座貸越が認められると、月々の償還が棚上げされるので資金繰りは楽になる。
 
 問題はいかなる場合に「正常」と判断されるかという点になる。一般的には「破綻懸念先」「要注意先」野債権は不良債権とされてしまうため、運転資金は「正常」とは認められなくなる。
 
 しかし、「利息だけ」という返済が全く認められなくなるかというそういうわけではなく、銀行実務では一定年限後に回復可能性があればこれを認めるということらしい。ただ、この場合の「利息だけ」というのは、当座貸越での利息だけとはかなり意味が違う気がする。それは、経営が苦しいのでとりあえず「利息だけ」認めましょうということで、信用格付けが変化するわけではない。「利息だけ」に安心しないで、本気で格付けを回復する展望と意志、行動が必要だ。
 
 現在は金融円滑化法が施行され、「利息だけ」ということは随分やりやすくなった。しかし、いくら救済と言っても、将来的に回復の見込みがない企業に貸すわけにはいかない。何らかの将来ビジョンを示さないことには「利息だけ」ということにはならない。また、「利息だけで良いよ」という銀行の姿勢は、「あなたを許した訳ではない」と括弧書きがついてることを忘れないことだ。格付けは落ちているからだ。