名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.03.22 火曜日

さぞかし悔しかったろう

  株式会社Y1とその社長Y2が、破産会社X株式会社の管財人から訴えられた事例を紹介したい(大阪地裁H22.5.25、判時2092号106号)。
本件はY1社の優越的地位に基づく不当な行為が認められた事例である。下請けの悲哀がにじみ出ている。
 
 Y1は飲食店のフランチャイズなどを業とし、かなり手広く展開している。X社はY1社の店舗などの内装工事を請け負っている。判決文によるとX社にとって、Y1社からの仕事は全受注件数の9割となっている。Y1社は資本金、従業員数、経営利益などXに比較して相当規模の違いがあった。
 
 こうした関係があれば、当然従属関係がある。Y1社はX社に対して実にやりたい放題だったようだ。 ① 見積書は常に減額査定し、着手金も中間金も支払わない。 ② 原価割れの値引き求められる。 ③ Y1社からの設計変更要求などで工期が遅れても賠償金を払わされる。
 
 裁判では全部は認められなかったが、Y1社長もいろいろ要求している。 ① 自宅内装工事や外装工事、浴槽工事をX社にやらせておいて請負代金の一部を支払わない。 ② 会社関係者の宿泊費や良好費用を負担させるなどの接待をさせる。
 
 きわめつけはY1社社長の行動だ。 「被告甲野(仮名)は、乙山(仮名)との旅行やゴルフの際、悪ふざけの意図で、乙山の髪の毛にガムを押しつけたり、眠っている乙山に水をかけたり足をライターであぶったり、また、鼻毛カッターで乙山の眉毛を剃ったりして、困った顔をした乙山を見ておもしろがっていたが、乙山はこれらの行為に対して強く抗議することはできなかった。」(判決文より)。
 
 結局、X社は資金繰りに窮し倒産してしまった。
 
 下請けはいつも従属的な地位にある。だからといって、それを濫用することは独占禁止法からいって許されない。本件では独禁法違反をストレートに認めたわけではないが、優越的地位に基づく濫用事例として公序良俗に反すると認定し、不当値引き分や、社長私邸の外装工事代金の支払いを命じた。
 
 もっとも、下請けとはいえ独立した事業を営む社長は一方で常に誇り高くあらねばならない。そこまでやられて、そことの取引を維持するかどうかはどこかで決断しなければならなかったろうし、いいなりに請負代金を決められていったところで、交渉しきれなかったことについては教訓とされるべきだろう。そうでなければ中小企業はやっていけない。