名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.03.30 水曜日

会社分割と雇用契約

会社分割というのは、会社の一部を分割して新会社や既存会社にに承継させることを言う。M&Aをやりやすくするために設けられた制度だが、昨今は事業再生にもよく使われる。事業再生に使われるようになったのは債務の「履行の見込みがあること」という要件がなくなり、事前備置書面には「債務の履行に関すること事項」を記載すればよいとなったからだ(会社法施行規則183条6号)。

 
 ところで、会社分割の場合、当該部門の財産、債権債務関係、資格などが包括的に移転する。事業譲渡のようにいちいち処分しなくても良い。雇用契約も同様だ(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下、「労働契約承継法」)3条)。そもそも、特定部門の雇用契約がそのまま移転しなければ組織が移転したことにならない。
 
 しかし、労働者側から見れば、雇用主がいつのまにか替わってしまうというのも困る。会社分割制度に関しては、労働者保護の観点から、労働契約承継法、同法施行規則及び関係指針が以下の通り定められている。
① 労働者及び労働組合への通知 ② 労働契約の承継についての会社法の特例 ③ 労働協約の承継についての会社法の特例 ④ 会社分割にあたっての労働者の理解と協力を得る手続    これらの手続きが不十分だと労働者は労働契約承継法3条が定めている、雇用契約の承継を否定できる場合があり得る(最判22.7.12判タ72頁)。
 
 労働者への通知(承継法2①)から始まり、会社は労働者の理解と協力を得るための協議(承継法7)をしなければならない。労働契約の承継に関する労働者との協議(平成12年商法等改正法附則5①)また、労働協約中の分割契約等に定める部分の労使合意(承継法6②)が必要である。
 
 この外にもいろいろあって、かなり面倒くさい。しかし、労働者と向き合う良い機会になるだろう。