名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.05.02 月曜日

申告の誤りで、税理士が訴えられた事例

誤った申告のために重加算税、延滞税を追徴された場合、税理士に責任追及できるだろうか。弁護士はある意味どん欲な職業で誰にでも相手に裁判する。税理士も例外ではない。時には弁護士を弁護士が代理人となって訴えることもある。アメリカなどには弁護過誤専門の弁護士がいるくらいだ。

 
 依頼者が提出した資料に基づいて申告すれば税理士は免責されるという神話がある。「」税理士は税務署のような調査権がないからしかたがないじゃないか。」こういう話は通用するだろうか。
 
 ある不動産業者に礼金や更新料の申告漏れがあった。この業者は収入の中に礼金、更新料といった明細を税理士に示すことはなかった。普通、礼金、更新料などはあるのが当然だから税理士がこの点踏み込んだ事情聴取をするべきところだが、本件では税理士の息子と甥が事務員をやっていて、すべて対応していた。事務員に任せきりにしている税理士は多い。そうした中で間違いが発生したのである。
 
 東京地裁は依頼者の出した資料をそのまま鵜呑みにする姿勢は許されないとした。つまり、税理士には「税務の専門家として、・・・・適切な助言や指導を行って、確定申告書等を作成事務を行うべき義務がある。」とした(東京地裁H21.10.26、判タ199頁)。
 
 依頼者の提出した資料に「疑問をもち」「説明を求め」「追加資料を促すことは容易であった」それを怠ったというのである。
 
 「被告の対応は、従業員である二郎をして、原告から提出された本件各資料を精査、確認することなく、そのまま転記して不正確な内容の本件確定申告書等を作成させ、自らも、その内容の正確性を精査、確認せず、漫然と記名又は記名・押印した」
 
 もちろん、税理士には税務署のような質問検査権はない。しかし、「疑問をもち」「説明を求め」「追加資料を促すこと」ぐらいは必要だったというのである。
 
 どうしても依頼者が言うことを聞かなければ、税理士としては辞任する外はないかもしれないが、世の中の企業はどこかスネに傷があって、そんなことで辞任していたら、税理士業がなりたたないし、税理士のない企業が世の中に氾濫してしまうかもしれない。
 
 ちなみに、本件で認められた金額は402万3300円である。