名古屋E&J法律事務所ブログ

2016.05.10 火曜日

学習塾「校長」の未払い残業

最近未払い残業請求の事件が増えている。中小企業はよくよく注意する必要がある。

 
 ある社長と話していたら、「うちの社員は働くのが好きなんだと言い、特に言わなくても残って仕事をている。」、「家でじっとしているより働いた方がいいみたいだ。」などと気楽なことを言っていた。実際には、問題に気づいているのだろうが、そう言ってごまかしているようにも見える。
 
 管理職は残業代を払わなくてよい。と、まことしやかな噂として流れている。
 
 この事例は東京、横浜にいくつか予備校を持つ有名進学塾の事例だ。塾の校長が未払い残業代を求めて訴えを提起した。横浜地裁は4人の原告の請求を認め、それぞれ約250万円の支払を命じた(横浜地裁H21.7.23、判時2056号1556頁)。全員で約1000万円、損害金は2年分はあるから、300万円ぐらいの損害金も付される。
 
 普通「校長」は管理職なのだが、この進学塾では特に経営に参画した事実もなく、勤務記録表で労働時間も管理されており、手当もあるが年収400万円でたいした金額でもなかった。典型的な名ばかり管理職だった。
 
 この事件では未払残業代に対して、賃金の支払い確保に関する法律に基づいて年14.6%の損害金を支払わされるたほか、悪質であるとして、労基法114条に基づいて付加金の支払も命じられた。これは未払賃金で悪質な事例では未払額相当額の「罰金」を支払うことができるという内容だ。つまり、未払い残業代約1000万円に加えて、さらに1000万円付加金を払えと命じられたのである。
 
 管理職は労働基準法41条2項が定めているが、名称が部長であろうが、校長であろうが、管理職の要件を満たさなければ管理職にはならない。
 
 管理職というのは「労働条件の決定その他労務管理につき、雇用主と一体的な立場にある者」とされ、次の要件が求められる。
 
 ① 雇用主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を有する。
 ② 自己の出退勤について、自ら決定し得る権限を有する。
 ③ 管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外労働の割増賃金が支給されないことを十分補っている。
 
 働いたら働いただけ支払うというのが原則だ。何か無理をしようとすると必ずしっぺ返しを食らう。無理して管理職扱いするより、きちんと支払うべきだと思う。