名古屋E&J法律事務所ブログ

2019.07.18 木曜日

高齢者と交通事故(1)

1 はじめに   平成22年版高齢白書によりますと、平成21年10月1日現在、日本の総人口は、1億2751万人、うち、65歳以上の高齢者人口は2901万人(約22.1%、75歳以上の高齢者人口は1371万人(10.8%)だといいます。   日本の65歳以上人口は、昭和25年には5%に満たなかったのですが、昭和45年に7%を超え、平成6年に14%を超え、日本の高齢化は急速に進んできました。   これに伴い、高齢者が加害者・被害者となる交通事故の件数も増えています。     ところで、高齢者が被害者となった場合、(1)事故と後遺障害との因果関係、(2)高齢者事故における素因減額、(3)事故による後遺障害の加重、(4)家事労働の逸失利益、(5)年金の異質利益性、(6)遺族年金の損益相殺、(7)過失相殺等が、問題となりえます。     これから、複数回に分けて、これら高齢者の交通事故の問題について、取り上げていきたいと思います。

 
2 高齢者事故における事故と後遺障害等との因果関係。 (1)責任論   交通事故事案の場合、自賠責法3条により、過失の立証責任が加害者側に転換され、かつ、立証すべき内容も加重されているので、実務的には、責任論が問題になることは比較的少ないと言えます。   しかし、高松高判平成7年11月24日では、国道を横断中に転倒した被害者(当時72歳)の転倒場所とほぼ同じ場所で走行してきた加害者運転の原動機付自転車が転倒した事例について、「被害者が傷害を負ったことは認められ、自ら転んで生じた傷害としては重すぎるとの疑いがぬぐえないものの、衝突あるいは接触以外には生じない程度の重傷とまで断定しうる根拠もなく、他方、被害者が路上で転倒したところを、避けようとした加害者が急ブレーキを踏んでハンドルを取られ転倒した可能性も全く否定できないわけではなく、被害者が事故当時のことを記憶していないため、どのような外傷によって生じた健忘症であるかが明らかでない以上、接触を認めるのは困難である。」として、加害者の行為と被害者の損害の因果関係を否定していますので、注意が必要です。   この事例は、事故当日、病院での事情聴取に対しても被害者が自損事故と認める対応をして警察も自損事故と処理していたこと、法廷でも記憶がないと供述したことから、接触事故との認定にいたらなかったものです。   接触事故でなければ、不明な原因によって自ら転倒して重傷を負ったことになるし、事故による健忘症でなければ事故前から記憶力が低下していたことになりますが、被害者が若年であったならば、そのような認定をすることは極めて不自然と言えるでしょう。   このブログをお読みいただいているみなさんも、万一被害に遭われた場合には、事故当日の供述は、以後の事実認定において極めて重視されますので、動転する気持ちを抑えて務めて冷静に、「憶えていること」「憶えていないこと」をしっかり分けて話し、記憶が曖昧であるのに自己の非を認めるようなことを言わないように、気をつけていただきたいと思います。                                                                  (つづく 次回「高齢者と交通事故(2)」は、損害論です